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■第47回「売上げ・利益を上げる買い物かご効果」

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欧米ドラッグ最新事情 第47回
「売上げ・利益を上げる買い物かご効果」

売上げ「来店客数」−「一品単価」−「購買点数」であらわされる。一品単価を上げれば、値上げした店とか高い店というレッテルが貼られて来店客数が減少していく。そのため来店客数を一定とすれば、売上げを上げるのに大切なことは購買点数を上げることである。

スーパーやドラッグストアやコンビニエンスストアに買い物に行ったとき、買い物かごを持たないと、手で持てる範囲ということで2〜3品の買い物にとどめることになる。手で持てる範囲以上は買うのをやめようという意識が働くから、買い上げ点数は少なくなってしまう。しかし、一旦買い物かごを持つと、複数個購入しようという気分になる。そのように、人間は買い物かごを持たないときと持つときでは買い物行動に対するスイッチが完全に違ってくるのだ。ウォルマートではショッピングカートを持った人は持たない人の4倍購入するというデーターがある。

叉買い物かごを持った場合は75%のお客が実際に購入するが、持たない場合は35%程度の人しか買わないという。買い物かごを持たせることが購買点数アップの秘訣だ。

そのため、米国の小売業では買い上げ点数を上げるために、来店客にできるだけ買い物かごやショッピングカートを持ってもらえるように努力している。例えばウォマートでは中高年の従業員をグリーターとして配置し、来店客それぞれに挨拶をしながらショッピングカートを渡している。これは顧客サイドから見ると親切な店という印象になる。店サイドから見ると、万引き抑止につながる(顔を見られたということで)し、購買点数が上がるのだ。私の主催するドラッグストア研究会のメンバー企業に協力してもらい買い物かご効果を調査した結果が下記のとおりだ。


◆買い物かごを持つ・持たないによる顧客の買い物金額の違い

  使用率 滞店時間 客単価
かご無し 43% 5分 980円
かごを持つ 44% 13分 2930円
カートを使う 13% 22分 5340円
平均 57% 10.7分 2404円


買い物かごを持たない人の買い上げ金額は980円、買い物かごを持った人は2930円、ショッピングカートを持った人は5340円という数字が出ている。また滞店時間も、かご無しの人は5分、かごを持った人が13分、カートを持った人が22分と大きく違う。

仮定の話だが、月間18000人来店する店で、かご無しの人全員にかご叉はカートを持たせた場合、下記表のとおり売上げ35%アップも夢でないのだ。これ程買い物かごの効果は大きいのだ。


  改善前 改善後
買い物スタイル
(人)
改善前比率
(%)
客単価
(円)
購買金額
(円)
買い物スタイル
(人)
改善後比率
(%)
購買金額
(円)
かごなし 7740 43 980 7585200 0 0 0
かごあり 7920 44 2930 23205600 15660 87 45883800
カート 2340 13 5340 12495600 2340 13 12495600
合計 18000 100 2404 43272000 18000 100 58379400


次に買い物かごの設置について話してみよう。お客に買い物かごを持ってもらうということは、購買率や購買点数を上げる上で、最も単純かつ効果的な方法である。買い物かごを有効活用するには次のことが大切である。


  1. 買い物かごのサイズ

    ショッピングカーは大量に買い物をするときに有効である。また高齢者が杖の代わりに使っている場合も多い。ドラッグストアのようにアイシャドー用ペンシルなど小さな物を売る店では、買い物かごから落ちないように工夫する必要がある。イギリスのドラッグストアブーツでは、普通の買い物かごの底の3分の一は小物を入れても落ちないようにプラスチックのトレーになっている。店によっては目の細かい買い物かごやサイズの小さい買い物かごを揃えているコンビニエンスストアもある。これはちょっとした買い物に便利だし、子供が喜んで持って買い物に参加している。ニューヨークのローカルスーパー・ウエグマンでは、子供用の小さなショッピングカートやキャラクター付きのショッピングカートを用意している。子供も喜ぶし、ほかのお客も思わずほほえんで店内は暖かな雰囲気に包まれている。また歩行困難なお客向けの電動ショッピングカートは多くの店が取り入れている。

  2. 買い物かごの色

    ファッション店や化粧品店の買い物かごにはファッション性も大切だ。ディスカウントストアの安っぽい黄色のかごではたのしんで買い物をする気分にはなれない。スーパーマーケットでは青果のイメージで濃いグリーンの買い物かごにするのもしゃれている。店のイメージや商品に合ったおしゃれな買い物かごを用意したいものだ。

  3. 買い物かごの設置場所

    お客は店に入った直後はまだ気持ちの上で買い物をする準備が出来ていない。最初は店の外を歩くのと同じスピードで店内を歩き始めるから、入り口のすぐそばに買い物かごを置くと、かごに関心が向く前に通り過ぎてしまうことにもなり、買い物かご置き場が無駄なスペースになる可能性が高くなる。店に入って出来るだけ早くお客の気持ちを買い物モードに切り替えさせるためには、店の入り口から2メートル程先の両側に買い物かごを置くのが望ましい。

  4. 買い物かごの定位置

    買い物かごは入り口の右側に置く。右利きの人が多いので、お客は取りやすい。左側に置くと取りにくいから、買い物かごを手にしないまま店内に入っていくことになる。ショッピングカートの場合は、入り口の右側でも左側でも良い。また買物かごを持たずにショッピングを始めたお客が途中で買い物かごが必要になった状況にも応じられるように、必ず客動線の途中に買い物かごを配置する。購買頻度が高くサイズが大きい商品群のぞばの買い物かごやショッピングカートの設置は必須だ。シアトルにあるバーテルドラッグでは400坪の店内で14ヵ所に買い物かごを配置している。

  5. 買い物かごの置き方

    買い物かごを重ねて置くと、顧客が取るのに不便である。とりにくいから使わないという人もいるので、取りやすい置き方をしなければならない。買い物かごの中程からお客の方へ取っ手を向け、傾斜を付けて積み重ねると良い。

  6. 買い物かごを手渡す

    関西出身の某安売りドラッグストアはとかくその安売り体質で業界内では批判がある。しかしあれだけお客に支持されているのは安売りだけが魅力ではないのだ。従業員はアイドルタイムに店内を回遊し、「買い物かごが必要なお客様はお申し出ください」と、買い物かごを手渡すことをしている。買い物かごを持たないで買い物をしている人に喜ばれ、「ありがとう、助かった。」という声を良く聞く。店側にとっては、買い物かごを渡す行為で、顧客に喜ばれ、買い上げ点数が上がり、店内での万引き行為に対する警戒にもなり、と店にメリットのある行為を同時に行っていることになる。

  7. 買い物かごを取る確率を上げる方法

    チラシや推奨商品のパンフレットを買い物かごに入れておくと、お客の視線を引いてかごをとる確率が上がる。また店によってはメーカーとのコラボで、買い物かごの内側の側面にメーカーの新製品案内などを行ってお客の目を引いている。ウォルマートやターゲットではグリーターがショッピングカートを来店客に手渡している。これはフレンドリーな雰囲気を作るためでもあるが、同時に売上げが上がることも考えに入れている。UCLAがあるロサンゼルス・ウエストウッドにあるスーパー・ラルフスでは、ショッピングカートをいろんな人が触って気持ちが悪いという顧客のクレームに対応して、ショッピングカーとのそばに除菌シートが設置され、顧客は自分でショッピングカートのハンドルを拭いて使っている。

  8. 買い物かごの補充

    店内数箇所に買い物かごを設置すると、思った以上に利用率が高く、買い物かごが空になっている状況がしばしばある。それを防ぐために、米国No.1のドラッグストア・ウォルグリーンでは、パートの人の交代時に必ず買い物かごの補充をすることを義務付けている。

ホールフーズマーケットは、医食同源の発想から、食の安全・安心のために法律より厳しい自社の高品質管理基準を設けており、よく売れているナショナルブランド商品でも品質基準に合わない商品は取り扱わない。野菜は7マイル以内の契約農家から採れたれたものを提供し健康に良い地産地消主義を推進、オーガニックで環境にやさしい商品は普通のスーパーより15%高いがロハスの人々に愛されている。またホールキッズコーナーでは子供の頃からの正しい食生活の大切さを訴えている。

スチューレオナードはたった3店舗の店だが、そのうちの一店舗はギネスブックに載る売り場生産性を記録した。商品のアイテム数は800と少ないが週に10万人が来店し、店内はスーパーマーケットのディズニーランドと言われるほどで、店にいるだけで楽しくなるようなWow!と言わせる雰囲気を持っている。店の外にはミニ動物園があり、店内では動物の人形が歌って踊る。店の入り口には、「お客様は常に正しい」という企業の信念が掲げられている。

百貨店のノードストロームはその圧倒的に素晴らしい顧客サービスでお客を魅了している。靴を買いに行けば、必ず3足以上の靴を試着させてくれ、お客が間違いなく一番適切な靴を選択できるようにしている。そして接客のときは、椅子に座って靴を試着しているお客の目線に合わせられるようにひざまづいている。またお店ではピアノの生演奏が提供され、その雰囲気が顧客の心を豊かにしてくれている。



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