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■第6回「2002年度ウォルグリーンの実績」(パート2)

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欧米ドラッグ最新事情 第6回
「2002年度ウォルグリーンの実績」(パート2)

OTCの分野では、オルターナティブメディスン(代替医療)の流れからビタミン、ミネラル、ハーブに力を入れている。そして全米に4000店舗以上の店を持つビタミンの最大手専門ショップであるGNCの売上げを奪うべく、ウォルグリーンのパッケージにはGNCと値段を比較して下さいというメッセージが載せられている。又高齢化社会を反映して、第二の心臓であるオーラルケア、第三の心臓であるフットケア、介護・看護商品の分野にも力を入れている。そして面白いのはベビーケア商品にも力を入れていることである。価格ではウォルマートに遥かにかなわないが、ベビーケア商品の持つ力を見直した結果である。つまり、ベビーケア商品の売上はしれているが、ベビーケア商品を購入する人々は家族の必要商品を全てその店で購入する傾向がある為、大変な利益客であることに着目したからである。それとベビー用品コーナーは、可愛いPOPの活用によって店に優しさを作る為クレームが少なくなるという副次的な効果も計算している。

化粧品の売上げではウォルマートに次いで全米第二位である。ウォルグリーンの顧客の65%は化粧品を使っているが、人種・年齢・収入によって求める化粧品の種類が違っている。ウォルグリーンはどの店にもコスメティシャンを配置し、店舗の商圏に合った最適なコスメティック売場を作っている。このビューティーケアコーナーで力を入れているのが、アンチエイジング化粧品、ウイメンズヘルスコーナー、キッズ化粧そしてメンズ化粧である。アンチエイジングは高齢化社会を反映して、しみやしわを取る化粧品、しみやしわが出来にくい化粧品、さらにそれらを隠す化粧品が売場を大きく占めている。ウィメンズヘルスは、女性の健康は生理をはじめ男性とは異なるということから、女性のための健康と美を考えたビューティーケアコーナーとして、ビューティーケア商品、クスリそしてビタミン類という組み合わせで展開され始めている。キッズ化粧は子供の化粧の習慣の早熟化という点と、子供に好かれない店は衰退するという傾向(子供と買物に行く時、大人は子供が好む店を選択する)、そして小さい時に使いなれた店は大人になっても使う傾向があるということで品揃えに力を入れている。又メンズ化粧は、男性用ヘアカラー、マニキュア、コロン、脱毛等、男性の化粧に対する関心の高まりを受けてである。

ウォルグリーンの強みは「便利性」で、ディスカウントストアやコンビネーションストアと戦う為の大きな武器である。商圏は小さく、駐車場は店舗に隣接している、店舗面積も大き過ぎないので、売場が見つけやすく買物が便利である。その上24時間営業店舗は900店舗にのぼり、これは全米の24時間調剤店舗の55%のシェアを占める。2879店舗(店舗総数の74%)でドライブスルー調剤機能を持ち、殆どの店で1時間現像の機能を持つ。またコンビニエンスフードの品揃えは、間に合わせ食品の便利性要望を満たしている。コンビニエンスフードの中で力を入れているのが「車中消費商品」である。車社会の今日、車の中で食べやすいように又車の中が汚れないように考慮されたパッケージのスナックや飲料水のコーナー取りがされ始めている。

店舗スタイルの変遷

2002年 % 1992年 %
総店舗数 3883 100% 1736 100%
フリースタンディング店舗 2973 77% 231 13%
24時間店舗 900 23% 184 11%
1時間現像機能店舗 3785 97% 6 1%
ドライブスルー調剤機能店舗 2879 74% 16 1%

立地に関してはベストな場所しか選択しない。それは一度出店すればリース契約等の関係から簡単には撤退出来ないからである。そのため立地選択は非常に慎重になされ、過去10年間に3109店舗出店したが、売上げが悪くて撤退したのはたったの2店舗である。消費者のフォーカスグループ調査によると、ウォルグリーンの顧客は彼らの住まいから2マイル以内に店を欲している。現在米国人の60%はウォルグリーンの店舗から5マイル以内に、40%は2マイル以内に住んでいる。

ウォルグリーンの店舗は、地域に歓迎される存在でありたいという考えから、地域の雰囲気にマッチしたデザインが選択されている。そして顧客の安全を配慮して店の内・外とも充分に明るく、又駐車場は出来るだけ店の前面に配置するようにしている。

昨年ウォルグリーンは3百万ドル以上をチャリティに、そして1.9百万ドルを教育機関(主に薬科大学や小学校)に寄付した。また小児糖尿病研究機関、米国心臓病協会、米国がん協会、ユナイティド・ウエイの為の大手募金機関になっている。

ウォルグリーンは、顧客をケアする従業員に尊敬と尊厳をもって接することを旨としている。そして従業員が判断する際に考慮すべき4つの言葉として、次の「Four Way Test」を全店舗の従業員控え室に掲示している。
  1. それは真実か?
  2. それは関連する全ての人にフェアか?
  3. それは良い関係とフレンドシップを作るか?
  4. それは関連する全ての人に有益か?
ウォルグリーンでは外部の人間をスカウトしてマネージメントレベルにつけるのでなく、出来るだけ社内の人間を昇進させるようにしている。それも、必ず現場を経験していることが必須の条件になっている。店長、ディストリクトマネージャー、副社長そして社長、会長という具合だ。実際に現在のトップレベルは全て店舗の従業員から上がってきた人たちである。又かつては流通業が大学卒の人々に魅力ある職場でなかったこともあるが、時代が変わった今、過去4年間で大学卒の生徒の応募は3倍に膨れ上がったが、これはウォルグリーンが職場の安定性と倫理観の強い企業であることを物語っている。


又、ウォルグリーンはテクノロジーを最大限活用する企業である。インターコムプラスはウォルグリーンの全店舗を通信衛星で結び、どの店でも患者の薬歴を管理出来るようにした。SIMSプラスは適正在庫・自動発注を可能にし、BDMは店舗の商圏にあった品揃えを可能にした。

2003年度は1021百万ドルを設備投資資金として予定している。このうちの56%は450の新店舗向けである。配送センターに17%、店舗テクノロジーに15%、そしてその他に12%である。又店舗のリロケーションもより魅力的で便利な場所に積極的に行ってゆく。
ウォルグリーンは成長を続けている。2003年には450店舗をオープンする予定で、2010年までに6000店舗にするという今までの計画を7000店舗に変更した。ウォルグリーンの成長はそのまま株価に表われ、2002年8月31日現在、1株当り10年前の同日の株価の6倍、20年前の同日の株価の60倍になっている。

ウォルグリーンは現在無借金で、4億ドルの現金と30億ドルの価値の土地を保有している。メリルリンチはこの会社を収益力の高い米国企業トップ10の一社としてあげた。創立者のウォルグリーン氏は、店が成功する為には、1000にも及ぶ小さな正しいことを毎日きっちりやることであると述べている。



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