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■第8回「業績回復の著しいエカード(Eckerd)」

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欧米ドラッグ最新事情 第8回
「業績回復の著しいエカード(Eckerd)」

百貨店のJCペニーの傘下にありフロリダ州ラルゴに本部を置くエカードは、2000年には無理な吸収合併戦略によるツケに加えて、ドラッグストアオペレーションを知らないJCペニー経営陣による運営により、営業利益段階で赤字に陥るという苦戦を強いられた。その後ウエイン・ハリス氏をCEOに迎え、彼の強力なリーダーシップの下で著しい回復を見せ、2002年度は営業利益で前年対比約2倍の412百万ドルを、そしてEBITDA(金利・税及び減価償却前利益)では前年比153%の665百万ドルを記録した。売場の生産性も年々上げており、2002年度は年間のスクエアフット当りの売上げが490ドルにも達した。


2002年 前年比 2001年 前年比 2000年 前年比
売上 14,643百万ドル 105.7% 13,847百万ドル 105.8% 13,088百万ドル 105.3%
売上/sqft 490ドル 104.2% 470ドル 105.9% 444ドル 112.4%
営業利益 412百万ドル 198.1% 208百万ドル - (76百万ドル) -
EBITDA 665百万ドル 153.2% 434百万ドル 316.8% 137百万ドル -
店舗数            
年初数 2641 - 2640 - 2898 -
新店数 109 - 76 - 174 -
吸収・合併店数 8 - 2 - 6 -
閉店数 (72) - (77) - (438) -
年末数 2686 45 2641 1 2640 -


回復の要因を探ってみると下記の通りである。


1)新しいストアレイアウト

 今まで顧客の平均滞店時間は6〜7分であったが、エカードは戦略として顧客の平均滞店時間を15分までに引き上げるレイアウト戦略をとった。それ以前のフェーズ2プロトタイプと呼ばれたレイアウトは、入り口から一直線に店の奥にある調剤室まで行ける主通路が店の中心に組まれていた。新しいプロト2000デザインは、色々な売場に回遊出来るような壁に沿った主通路構成になっている。顧客が店全体を回遊するように組まれているので、セルフ売場の売上が上昇した。そしてゴンドラの配置も従来型は斜めに配置し、顧客には売場が分かりにくかったが、改良型では入り口から目隠ししていても主な売場に行けるようメSimple Is Bestモをコンセプトにしたウナギの寝床型グリッド式ゴンドラ配置が採用された。又ビューティーにおけるプロモーションスペースを従来型より40%増やし、ビューティーのデスティネーションパワーを高めた。エカードのエクスプレス・フォトコーナーは入り口の左側に配置されているが、相変わらず好調である。このデジカメの時代でも大切な写真は紙焼きにする需要が高い。写真コーナーでも「スマイル・アフター・スマイル」プログラムというロイヤルティプログラムがあり、8本のフイルムを現像する度に1本フィルムが無料でもらえる。これはDPEを通しての顧客の囲い込み戦略である。

また店の左側奥に18フィートのバリュー・コーナーを設け、メGet More Valueモの大きなサインを貼付した。毎週商品を変えたお買い得商品を販促として提供し、店の奥まで顧客を誘導している。そのコーナーには便利性強化と来店頻度を高める為、食品・飲料水・スナック等に大きなスペースが与えられている。このヴァリュー・コーナーの設置により、ヘルスケア・ビューティーケア・フォトコーナーと合わせて、店内に4つの大きな核が出来上がった。


2)エブリデー・バリュー価格戦略

 顧客にドラッグストアは高いという印象を与えると顧客は遠のいて行く。その点でエカードの価格はどちらかというと高めに設定されており、顧客離れが見られた。そこで競争力のある価格を提供する為にエブリデー・バリュー価格戦略を取った。約5000アイテムにエブリデーロープライス(EDLP)戦略を、そして毎月1000アイテムについては3ヶ月間程度の一定長期間ロープライスを提供する、テンポラリー・ロープライス(TLP)戦略を取った。EDLPに採用される商品は顧客の価格に敏感な商品で、飲料水や紙製品がよく対象になる。そして価格が魅力的であることを顧客に印象づける為に、壁面や床、天井からの釣り下げなどにEDLP商品やTLP商品のサインを大々的に表示した。


3)最新のテクノロジーの導入

 調剤では最新のテクノロジーが導入され、患者ケアが高いとして顧客の信頼を集めた。また薬剤師の生産性を上げた。基本的には、どの店でも出来る薬歴管理、自動調剤機器の導入、コンピューターによる調剤のリフィル客に対する電話オーダーの受け答え、また顧客への健康情報の提供もされるようになった。また在庫管理適正化の為に、在庫管理システムが導入された。エカードは店売り以外に、WebとJCペニーの関係からカタログ販売を実施している。しかし彼らはWebの位置づけを、プロモーション情報の提供による顧客を店に運ぶ機能・健康情報の提供・店舗の所在地の告知用と位置づけており、Webによる売上は余り期待していない。


4)従業員のモチベーションアップ

 エカードは今まで本部中心の運営をしてきたが、顧客を一番知っているのは店舗であるということから、ディストリクトマネージャー、店長そして薬剤師に大幅な権限委譲を始めた。そのため以前は10あった地区が、現在はフロリダ、テキサス、北東部、南西部そしてニュヨークの5つの支部に統合された。そしてディストリクトマネージャーの下に人事・調剤・セルフ売場・フォト・商品ロス対策のスペシャリストが配置された。販管費を下げる為に、パートタイマー比率を今までの2%から25%にあげている。そして顧客サービスを向上させる為に、従業員はカスタマーサービススペシャリストとして自分の名前を書いた名札を付けており、良いサービスをした従業員はその名札に白・銅・銀・金などのバッジが貼られて表彰されるようになった。これらは従業員のカスタマーサービスに対するモチベーションを高める戦略である。




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