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■第9回「ドラッグストア業界2002年の業績と新しい取り組み」(1)

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欧米ドラッグ最新事情 第9回
「ドラッグストア業界2002年の業績と新しい取り組み」(1)

◆北米(米国及びカナダ)のドラッグストアの売上と収益

2002年 2001年 前年比
チェーンドラッグの売上 1,341億ドル 1,242億ドル +8.0%
独立店ドラッグの売上 478億ドル 450億ドル +6.3%
ドラッグストアトータル売上 1,819億ドル 1,692億ドル +7.5%
チェーンドラッグの売上シェア 73.7% 73.4% +0.4ポイント
チェーンドラッグ店舗当り平均売上 5.9百万ドル 5.6百万ドル +0.3百万ドル
チェーンドラッグの税引き後利益 1.5% 1.5% 0.0ポイント


◆北米ドラッグストアの店舗数

2002年 2001年 前年比
チェーンドラッグの店舗数 22,798店 22,005店 +793
独立店ドラッグの店舗数 20,955店 21,110店 -155
ドラッグストア店舗数トータル 43,753店 43,115店 +638
チェーンドラッグの店舗数シェア 52% 51% +1ポイント
チェーンドラッグの平均売場サイズ 299坪(10750sqft) 285坪(10250sqft) +14坪(500sqft)


1) ドラッグストア業界トータル

CDRスペシャルレポートによると、一昨年9月11日のテロ以降アメリカ経済の成長は低下し、その影響でチェーンドラッグの2002年度売上げの伸張もまあまあの前年比8.0%で終わった。前年対比で見てみると2001年の8.4%、2000年の8.6%の成長より低下するという決して満足できる状態ではなかった。既存店の売上げの伸びは6.4%と前年と同じで、税引き後利益も前年と同じ1.5%であった。ドラッグストアビジネスは不況に強いと言う神話が長年あったが、その神話も昔ほどの強い響きはなくなった。チェ−ンドラッグの売上げ増加は800店舗近く増加した効果によるところが大きい。

一方独立店ドラッグの売上げは前年比6.3%で、前年対比で見てみると2001年の5.9%そして2000年の5.2%より伸びをみせた。店舗数では155店舗も減らしながらの結果としてはお見事と言うほかない。しばらく前までは大手チェーンドラッグの攻勢により、独立ドラッグ店は今後存続できないだろうとの予測が多かった。しかし1990年代の終盤から持ち直し、21世紀に入ってからは逆に成長し始めた。そしてチェーンドラッグに対して逆に少しずつ脅威を与え始めている。これは主に高齢社会の到来で、人々が顔なじみの店長や薬剤師、コスメティシャンそして従業員の居る独立ドラッグ店を選択したことによる。また独立店も店舗規模の拡大、魅力的な商品構成そしてロイヤルカスタマー作りに励んだことが大きい。


2) ドラッグストア業界への追い風となる高齢社会の到来

不況、サーズ、イラク戦争そしてテロと多くの問題に影響を受けている米国の経済であるが、このような中でドラッグストアの成長が健在なのは、50歳以上の人口の急増がもたらすお陰である。

21世紀に入り米国で最も成長する人口層は50歳以上の人々で現在75百万人いるが、2010年には95百万人に増えて32%のシェア、つまり3人に1人になると予測されている。これは1946年から1964年の間に誕生したベビーブーマーが毎年4百万人以上50歳台に突入しているからである。65歳以上の人口をみても現在35百万人で12.6%のシェアを持つが、2030年には7千万人に、そして2050年には全人口の30%を占めると考えられている。

この高齢化が何故チェーンドラッグにとって追い風かと言うと、年齢が上がるほど心臓病・脳卒中・関節痛・がん・欝・インポテンツ・骨粗鬆・アルツハイマーなどの病気が増加するからである。又価格の高い新薬の登場や、手術より薬による治療の増加はヘルスケア産業にとって大変な追い風なのである。現に調剤の分野だけを見てみると、55歳以上の人々は年間467ドルを調剤薬に使っているが、これは国民平均の2倍以上である。そして65歳以上の人々の処方箋の割合は、枚数において33%、金額ベースで42%のシェアを持っている。


3) ドラッグストア業界の抱える問題点と改善努力の2つのポイント

ドラッグチェーンが更なる成長を遂げるために改善しなければならない問題が今表面化している。現在ドラッグストアの抱える問題点は、調剤の利益率の低下とセルフ売り場における売上げの不調である。誰もが認める業界のリーダーであるウォルグリーンを除いて、多くのチェーンドラッグが厳しい現実に直面し、リテールファーマシーはかつての信頼をもう一度消費者から得る為の努力を開始している。

1. 調剤利益率の低下

2001年の米国小売業における調剤薬の売上は1,652億ドルで前年より17%も伸びている。そして米国の調剤売上合計で見てみると、2002年は13.5%、2003年は12.8%、そして2004年は11.7%の成長が予測され、小売業における調剤薬の成長は確実視されている。さらに、現在議会で討議されているメディケアという政府保険は65歳以上の人々に支給されるものだが調剤薬をカバーしていない。これが調剤薬をカバーするようになると市場は更に成長する。

しかしチェーンドラッグは60%近くの売上を利益の薄い調剤から得ているため、店全体の利益に大変な圧迫を与えているのが現状である。これは管理医療制度の発達により、第三者機関が調剤薬の売上げの90%を占めるようになったからである。ウォルグリーンですら55%の売上構成比を占める調剤の粗利率が22%程度である。利益率が低くても調剤はドラッグストアのメイン商品であり、調剤の無い店は消費者からドラッグストアと認められないため、儲からないからと言って調剤を外すわけにはいかない。

この調剤薬の利益率の向上の為に、ドラッグチェーンは保険会社との交渉力を高めることに力を入れている。ウォルグリーンでは妥当な利益をくれない保険会社とは契約をしない方針を打ち出している。そして最終需要先である企業に実態を訴え、保険会社の顧客である企業から圧力を掛ける戦略をも取っている。

又ドラッグストアはジェネリックにも力を入れている。ジェネリックが今後著しく成長すると予測されているからである。IMSヘルスによると、2004年にジェネリックは処方箋枚数の55%になると予測されている。ジェネリックのシェアは1992年に35%、1999年に47%と年々広がっているが、その背景にはマネージドケアの促進や、今後多くのナショナルブランドのパテント有効期限が切れる事情等がある。ジェネリックはナショナルブランドと比較してはるかに安くヘルスケアコストの節約になるため、政府や保険会社はジェネリックの使用を推進している。一方ドラッグストアも、利益率がナショナルブランドより高いので強力に推し進めている。現在ジェネリック・スイッチ法というのが施行されており、ジェネリックの効能がナショナルブランドと同一で、価格がナショナルブランドより低く、患者が同意している、という3つの条件を満たしていれば、薬剤師は処方箋に書かれているナショナルブランドからジェネリックへ変更することが出来る。



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