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■第12回「2002年度米国ドラッグストアにおける調剤薬市場の動向」

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欧米ドラッグ最新事情 第12回
「2002年度米国ドラッグストアにおける調剤薬市場の動向」

調剤薬市場の成長は続いており、2001年に30億枚であった小売処方箋枚数が、2006年までに40億枚になることが予測されている。2002年度の売上は11.3%伸長し1827億ドルを記録した。そして今後も大きな成長を予測されているが、その背景は次の通りである。
  1. 1946年~1964年の間に誕生した7600百万人のベービーブーマーが高齢化を迎えて、調剤薬に対する重要を高め、以前より薬を服用する率が増加している。10年前は65才以上の人々の平均服用調剤枚数が年間14枚であったのに対し現在は31枚と非常に伸びている。
  2. 65歳以上を対象にした政府保険であるメディケアに対して、近い将来調剤薬をもカバーする動きがあるが、実行に移されれば調剤薬の需要を押し上げる。
  3. 人々の寿命を延ばし且つ生活の質を向上させる新しい薬の開発は、調剤薬に対する需要を押し上げている。また医療費の高騰抑制にも大変貢献しており、調剤薬による治療(ファーマスーティカルケア)で20ドルを使った場合、他の医療費が128ドル節約出来る。
  4. 疾病管理、患者の生活指導、そして医師との協働作業の進捗により、薬剤師の役割が大きく広がり、その結果ビジネスが拡張している。
  5. シュア・スクリプトリンクのような調剤部門におけるエレクトロニクスの発達により、電子処方箋や医師とのコミュニケーションが非常にスムースになった。

だがおいしい話だけではない。同時に多くの問題を抱えている。保険会社からのプレッシャーによる薄い利益率、2002年度には22%の成長を記録したメールオーダー調剤の継続的な躍進(保険会社によるメールオーダー調剤の推奨又は強制)、薬剤師の不足(2002年度はチェーンファーマシーだけで5499人の薬剤師が不足)、調剤薬の自己負担額の上昇から来る需要のスローダウン、OTCドラッグの服用促進、カナダからブランド調剤薬逆輸入による低価格販売等々、問題も多い。

小売チャネル別に見た場合、調剤薬市場の王者であるチェーンドラッグ(40%のシェア)は、2000年・2001年は二桁成長をしたが、2002年度は8.4%の成長しかなく734億ドルの売上げに終わった。チェーンドラッグが圧倒的に一位の座を占めているが、ディスカウントストアやスーパーマーケットの方が遥かに高い成長を示している。驚くべき成長を示しているのはメールオーダーの調剤で、2001年度に25%、2002年度には22%の売上げの伸びを記録した。成長の理由は2002年度に全処方箋の49%は慢性病が対象であったが、その慢性病の調剤薬に対して保険会社は価格の安いメールオーダー調剤を使用することを強く薦めたり、保険対象の条件にしたためである。又消費者から見ると、慢性病の薬はいつも服用しているから良く分かっており、薬剤師のフェース・ツー・フェースのカウンセリングを必要としない。このように、メールオーダーは時間とお金の節約になるために急成長しており、非常に近い将来独立ドラッグの調剤売上げを抜くことが確実視されている。

調剤薬は各ドラッグストアの売上げの柱になっており、ウォルグリーンで60%、単独店で85%程度の構成比になっている。しかし保険を通しての調剤の増加と保険会社のパワーの増加により、ドラッグストアにおける調剤薬の利益率は急減しており、ウォルグリーンでさえ21%の粗利益率しかない。柱の部門で利益が上らない状況になっているのが、ドラッグストアの大きな問題だ。そのため調剤の効率的な運営が迫られ、セントラル調剤システムやオートメーション化が促進している。

◆小売チャネル別調剤薬状況

2001年 2002年
売上げ(億ドル) 構成比(%) 前年比(%) 売上げ(億ドル) 構成比(%) 前年比(%)
チェーンドラッグ 677 41% 11% 734 40% 8%
ディスカウントストア 152 9 12 174 10 14
スーパーマーケット 198 12 14 218 12 10
独立ドラッグ 339 21 8 367 20 8
メールオーダー 276 17 25 334 18 22
合計 1641 100% 13% 1827 100% 11%


◆小売チャネル別調剤枚数状況

2001年 2002年
売上げ(百万枚) 構成比(%) 前年比(%) 売上げ(百万枚) 構成比(%) 前年比(%)
チェーンドラッグ 1418 47% 6% 1474 47% 4%
ディスカウントストア 311 10 6 339 11 9
スーパーマーケット 418 14 6 444 14 6
独立ドラッグ 700 23 2 710 23 1
メールオーダー 161 6 11 174 6 8
合計 3008 100% 5% 3141 100% 4%


カデゴリー別全調剤薬枚数を見てみると、医療費の抑制によってジェネリック調剤薬の伸びが著しく10%の成長を記録した。一方ブランド調剤薬の成長は1%に止まった。そしてジェネリック調剤薬の構成比はブランド調剤薬に迫ってきている。

◆カテゴリー別全調剤状況

2002年全調剤枚数
(百万枚)
構成比(%) 前年比(%)
ブランド調剤薬 1637 49% 1%
ジェネリック調剤薬 1339 40 10
ブランド・ジェネリック薬 374 11 5
全調剤薬 3351 100% 5%


調剤薬の売上げを企業別に見てみると、トップ20にドラッグストアが7社占めているが、スーパーマーケットが9社、ディスカウントストアが3社、そしてホールセールクラブが1社占めるという他企業の存在が目立つ。他企業が調剤に積極的になったのはやはりワンストップショッピング機能を高める目的が強い。いずれにしても調剤はドラッグストアの専売カテゴリーでなくなったのである。

◆2002年度調剤薬売上げトップ20企業

順位 企業名 業態 調剤売上げ
(百万ドル)
前年比
(%)
構成比
(%)
店舗数
(店舗)
調剤扱い
店舗率
(%)
1 ウォルグリーン Dgs 17209 21 60 3942 99
2 CVS Dgs 16347 11 68 4100 99
3 エカード Dgs 10031 8 69 2686 100
4 ライトエイド Dgs 9986 7 63 3404 100
5 ウォルマート DS 9000 17 6 3400 94
6 アルバートソン Spr 5300 (18) 15 2295 90
7 クローガー Spr 4658 4 9 3413 51
8 セーフウエイ Spr 2591 0 8 1799 67
9 アーホールド Spr 2364 18 9 1420 56
10 Kマート DS 2200 (24) 7 1829 63
11 メディシンショップ Drs 2112 8 96 1246 100
12 ロングス Drs 1949 13 44 463 100
13 ブルックス・ファーマシー Drs 1148 56 68 332 100
14 ターゲット DS 1080 80 3 1147 67
15 ウインデキシー Spr 986 (5) 8 1073 68
16 コスコ Whc 838 30 3 413 77
17 パブリックス Spr 802 15 5 745 66
18 H.E.バット Spr 690 0 7 300 58
19 ジャイアント・イーグル Spr 660 8 15 213 78
20 ショプコ Spr 648 1 20 364 62

Drs=ドラッグストア、DS=ディスカウントストア、Spr=スーパーマーケット、Whc=ホールセールクラブ



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