欧米ドラッグ最新事情 第15回
「29年連続増収増益を記録したウォルグリーン」
2003年8月31日に会計年度を終えたウォルグリーンは、29年連続増収増益の業績達成を発表した。この会社は自らを「最も便利で最もテクノロジーの活用が進んだファーマシーサービス及びベーシックニーズの提供者」と位置付けている。売上は325億ドルで前年比13.3%の成長を記録し、税引き後の純利益では11.8億ドルで前年比15.4%の成長であった。これは全米44州とプエルトリコで展開している4224の店舗と、3つのメールオーダーの施設で上げた結果だ。ウォルグリーンが重要視する既存店の業績は売上において前年比8.6%の成長をし、新店は会社全体の売上増加分に7.5%の貢献をした。粗利益率は27.1%で2002年の26.5%より0.6ポイント増加した。増加の主な理由は、国からの指導によりベンダーからの販促費を広告費援助という捉え方で仕入れコストに反映するようにしたことだ。販売管理費は21.4%で、2001年度の21.0%、2002年度の20.9%より増加してしまった。株純利益は売上対比3.6%で前年対比15.4%の成長を記録した。主資本収益率は17.5%で前年より0.3ポイントダウンしたものの、この数値は他のチェーンドラッグの10%以下という実態を見ると、いかに収益性の高い経営をしているかが分かる。
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◆ウォルグリーンの2003年度業績
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2003年度 |
% |
前年比 |
売上 |
32505百万ドル |
100.0% |
13.3% |
粗利益 |
8799百万ドル |
27.1% |
+0.6ポイント |
販売経費 |
6951百万ドル |
21.4% |
+0.4ポイント |
純利益 |
1176百万ドル |
3.6% |
+15.4% |
株主資本収益率 |
17.5% |
- |
-0.3ポイント |
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店舗数は2003年8月31日現在4227店舗(3箇所のメールオーダー施設を含む)で、前年度より344店舗の増加であった。新しい店を430店舗作ったが86店舗の閉鎖があったから、純増は344店舗であった。閉鎖した店舗の場合、殆どはより良い立地にリロケーションされて新しい店舗になっているから、閉鎖した店の顧客に迷惑をかけるどころか、より便利性を提供する結果となっている。ウォルグリーンの場合、他社と違って吸収合併で店を増やすのでなくあくまで自前で店舗数をふやしているのが特徴だ。
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◆ウォルグリーンの店舗推移概要
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2003年度 |
2002年度 |
店舗数 |
新店 |
430 |
471 |
閉店 |
86 |
108 |
総店舗数 |
4227 |
3883 |
売り場面積 |
総売り場面積 |
1,298,166坪 |
1,185,333坪 |
店舗当り売り場面積 |
307坪 |
305坪 |
商品構成 |
調剤薬 |
62% |
60% |
OTC |
12% |
11% |
化粧品・トイレタリー |
26% |
7% |
ジェネラルマーチャンダイズ |
22% |
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ウォルグリーンの調剤件数は年間400万枚であるが、これは小売り全体の調剤の13%のシェアに当たり、米国一の調剤売上を上げる企業になっている。2003年度の調剤の実績は17.4%の成長で、そのうち既存店では13.2%の成長であった。2002年の21.2%、2001年の20.9%の成長と比較すると伸び率は減少したが、これはNBからジェネリックへの商品移行が多かったために販売単価が下がったこと、売れ筋調剤薬クラリティンのスイッチOTC化、ホルモン補充療法の副作用による需要の減少、カナダなど外国からの廉価処方薬の侵入等が調剤の売上に影響を与えた結果である。しかし高齢化社会による薬の需要の拡大(55歳以上の人々の処方回数は1992年に年間平均17回、2000年には26回と急上昇し、2010年には36回になると推測されている)や高額の新薬の市場化により調剤市場は益々成長し、2002年に1830億ドルであった米国の調剤市場は2012年には4460億ドルになると予測されている。そのため今後もウォルグリーンにとって調剤薬は非常に重要なカテゴリーである。現在調剤薬はウォルグリーンの全売上の62%を占めており、70年代の10%台からみると大幅な増加だが、若干比重が高すぎるのが気になり始めている。第三者機関(マネージドケア及び政府保険)関連の調剤の売上はウォルグリーンの全調剤売上の91%を占めるようになり、利益のある現金調剤は9%に落ちてしまった。これが調剤の粗利益、ひいては店全体の粗利益に問題を起す原因になってきている(調剤の利益率は1990年には35〜40%あったが、現在はウォルグリーンでさえ20%強しかない)。ウォルグリーンのメールサービス調剤の売上は2003年に10億ドルを達成したが、今後も著しい成長が見込まれている。
ウォルグリーンは商圏に合った店舗作りを強化しており、黒人・ヒスパニック・中国人といった人種や、年齢・職業・収入・家族構成やホテル街等にマッチするように品揃えされている。そして調剤の服薬指導ラベルを英語以外に10ヶ国語で表記出来るようにした。
ウォルグリーンの強みは「専門性」と同時に「便利性」であるが、これはディスカウントストアやコンボと戦うための大きな武器となっている。そのために店舗スタイルはフリースタンディング、24時間営業、1時間現像、ドライブスルーといった便利性を強化しており、10年前とは、全く違った姿になっている。
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◆ウォルグリーン店舗スタイルの推移
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2003年 |
% |
1992年 |
% |
総店舗数 |
4227 |
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1736 |
100% |
フリースタンディング店舗 |
3363 |
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231 |
13% |
24時間店舗 |
1112 |
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184 |
11% |
1時間現像機能保持店舗 |
4146 |
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6 |
1% |
ドライブスルー調剤機能保持店舗 |
3280 |
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16 |
1% |
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従業員154,000人、株主60万人、一日の来店客数360万人、1店舗の年間平均売上高7.4百万ドル、坪当たりの年間売上高24,372ドルのウォルグリーンが今後も成長を続けることは間違いなく、以前は2010年に6000店舗という目標数値を挙げていたが、現在では7000店舗に上方修正をした。2004年度には450店舗の新店舗をオープンする計画だ。2004年度の総投下資金10億ドルのうち、新店舗や改装に49%、店舗のテクノロジーへ22%、配送センターへ12%、そしてその他が17%である。また介護のホームケアサービスやスペシャルティファーマシー(エイズ、不妊症、小人症等の特殊な病気に対応するファーマシー)にも力を入れている。
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