欧米ドラッグ最新事情 第17回
「最近のプライベートブランドの動向」
競争の激化により、各業態がPBに力を入れているのには次のような理由がある。
|
- 利益の確保
ナショナルブランドは顧客の信頼と強い需要があるため非常に大切なのだが、価格競争に見舞われて利益を取り難い。そのため粗利ミックスの観点からPBの重要性が増している。
- 差別化とロイヤルカスタマー作り
PBは自社でしか販売しないブランドである為、競合との差別化になるだけでなく、ロイヤルカスタマーを作るのに役立つ。
- 企業エクイティ(企業資産)作りの手段
21世紀は「企業の信頼」が競争に打ち勝つための一つのカギになるが、PBは企業イメージの浸透や高揚のために非常に大切な手段になっている。
|
その結果PBの業態別浸透度は高く、スーパーマーケットでは99%とほぼ100%に近く、一番少ないスーパーセンターでも51%になっている。
|
◆PBの浸透度
スーパーマーット |
99% |
ディスカウントストア |
75% |
ドラッグストア |
59% |
スーパーセンター |
51% |
|
|
PBに対する信頼度をみると、66%の人は良いと感じている。しかしPBのお買い得感は薄れてきており、60%の人しか感じていない。その結果以前ほどPB成長の勢いは感じられなくなってきている。下記の表からも分かる通り、どの業態でもPBシェアの増加はわずかである。それは低価格のNB商品がダラーストア(アメリカ版100円ショップ)で購入出来るようになったからで、ダラーストアの成長が問題を投げかけている。それに加え多くのカテゴリーでPB化が進んだために、手抜きのカテゴリーも出現してカテゴリーによってはシェアを落とし始めている。
|
◆PBに対する考え方
多くのPBの品質は良い |
66% |
PBはお買い得 |
60% |
PBはNBと同じ品質 |
43% |
|
|
ドラッグストアのPBシェアは11%程度だが、大手チェーンのPB比率は金額ベースで15%程度になっている。CVSやウォルグリーンもPBに力を入れており、カテゴリーマネージメントを作るときの重要な商材になっている。ライトエイドではPBの売上が過去4年間に金額ベース及び数量ベースで50%以上も成長した。又ロングスは1500アイテムのPBを10%引きで販売して売上を伸ばした。
|
◆各業態におけるPBシェア
|
スーパー |
ドラッグストア |
スーパー/ドラッグ/
ディスカウントストア
(ウォルマートを除く) |
売上金額シェア |
|
|
|
1997年 |
15.7% |
10.2% |
14.7% |
2002年 |
16.3% |
10.6% |
15.1% |
差 |
+0.6 |
+0.4 |
+0.4 |
売上数量シェア |
|
|
|
1997年 |
20.0% |
12.1% |
19.1% |
2002年 |
20.8% |
11.9% |
19.5% |
差 |
+0.8 |
-0.2 |
+0.4 |
|
|
商品別に見てみると、下記のとおり内服鎮痛剤、錠剤胃腸薬、風邪薬などのOTCが多い。米国人がOTCに使うお金は平均年間185ドルであるため、各チェーンはOTCのPB化で顧客の固定化を図っている(例えば鎮痛剤アドビルの一つのタイプは、NBは6.29ドルなのに対しPBは4.79ドルである)。
ビューティーケア、ベビーケア、メンズケアがトップ20にランキングされていないのは、これらは消費者がこだわる商品でPBに向かないからだ。 |
◆2002年度売れ筋PB商品(金額ベース)
|
カテゴリー |
金額(百万ドル) |
1 |
ビタミン |
383 |
2 |
内服鎮痛剤 |
230 |
3 |
錠剤胃腸薬 |
176 |
4 |
風邪・アレルギー薬 |
158 |
5 |
禁煙促進商品 |
127 |
6 |
バッテリー |
117 |
7 |
ファーストエイドトリートメント |
115 |
8 |
フォト関連商品 |
110 |
9 |
大人失禁用品 |
100 |
10 |
紙おむつ |
77 |
11 |
その他治療薬 |
70 |
12 |
ファーストエイド |
66 |
13 |
風邪・アレルギー・鼻炎用リキッド |
58 |
14 |
スナック |
58 |
15 |
リキッド胃腸薬 |
57 |
16 |
ホームヘルスケア/ヘルスチェックキット |
57 |
17 |
ノンチョコキャンディー |
48 |
18 |
生理用品(ナプキン・タンポン) |
47 |
19 |
生理用品関連 |
46 |
20 |
家族計画用品 |
45 |
|
|
さて、米国におけるプライベートブランドの長い歴史を見てくると、プライベートブランドとして成功するには次のような条件を充たさなければならないことが分かる。
|
- “あの企業・あの店舗が販売する商品だから安心”という、企業・店舗の信頼が顧客の間で確立されていること。
- 顧客がブランドに余りこだわらないノンエゴ商品の性格が強いこと。
- PB売上比率が高くなり過ぎると、品揃えの悪い店というイメージになってしまうため、PB売上比率は20%を超えないこと。
- NB商品との価格差が30%以上あること。ただし差があり過ぎると消費者が品質に対して不信感を持つので、50%以上の価格差にならないこと。
- PBは認知率が低い為に、ナショナルブランドとの徹底した比較陳列を実施すること。
- 従業員がナショナルブランドとの比較において、価格だけでなく機能も十分に説明できる技量を持つこと。
|
今後日本でも米国と同じような理由からPB化が促進するであろうが、まずは「あの企業・あの店が販売しているのだから大丈夫」というように、企業・店舗が信頼されなければ、顧客は不安で商品に手が出ない。又日本人は米国人に比べてブランド志向がはるかに強いので、PBに向くカテゴリーの見極めを慎重にしなければならない。 |