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■第20回「2004 年度のウォルグリーンの実績」(パート2)

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欧米ドラッグ最新事情 第20回
「2004 年度のウォルグリーンの実績」(パート2)

ウォルグリーンの基本戦略は不変で、その第一が「専門性」だ。前回パート1で説明したように、ヘルスケアをコアコンピテンスにしているため、調剤に力を入れており、現在では米国小売業調剤枚数の14%を占めるようになった。またセルフメディケーションにおいても、日本の十把一からげスタイルのセルフメディケーションでなく、年齢(ベビー・キッズ・ティーンズ・アダルト・シニア)別、ジェンダー(男・女・ホモセクシャル)別、疾病(糖尿病・喘息・心臓病・エイズ・要介護等)別、職業別(肉体労働・オフィスワーカー等)などのように細かく分けて、それぞれに適したセルフメディケーションを推し進めている。オルターナティブメディスン(代替医療)の流れからビタミン・ミネラル・ハーブに力を入れたり、ウイメンズヘルス、ペインマネージメント、フトレスフリー、キッズヘルス、糖尿病ケアなどの新しいカエゴリーを作り積極的に展開したことが、セルフ売り場の売上げが既存店ベースで6%も成長した要因だ。

化粧品の売上げでは、ウォルマートに次いで全米第二位である。ウォルグリーンの顧客の65%は化粧品を使っているが、人種・年齢・収入によって求める化粧品の種類が違っている。ウォルグリーンはどの店にもコスメティシャンを配置し、店舗の商圏に合った最適なコスメティック売場を作っている。このビューティーケアコーナーで力を入れているのが、アンチエイジング化粧品、ウイメンズヘルス、キッズ化粧、そしてメンズ化粧である。アンチエイジングは高齢化社会を反映して、しみやしわを取る化粧品、しみやしわが出来にくい化粧品、さらにそれらを隠す化粧品が売場を大きく占めている。キッズ化粧の品揃えに力を入れているのは、子供の化粧習慣が早熟化していること、子供に好かれない店は衰退する傾向があること(子供と買物に行く時、大人は子供が好む店を選択する)、そして子供の時に使いなれた店は大人になっても使う傾向があるという考え方からだ。またメンズ化粧は、男性用ヘアカラー・マニキュア・コロン・脱毛等、男性の化粧に対する関心の高まりを受けてである。いずれにしても「貴方のベストビューティーを作りましょう」をキーワードに、ルック・グッドとフィールグッドを2本柱に、関連の商品を化粧品はもとより、OTC、クスリ、ビタミン類、アロマセラピーという組み合わせで展開し始めている。

第二の基本戦略は「便利性」で、ディスカウントストアやコンビネーションストアと戦う為の大きな武器である。商圏は小さく、入りやすく出やすいフリースタンディング立地が、全店舗の80%以上を占めるようになった。その上、24時間営業店舗は900店舗にのぼり、これは全米の24時間調剤店舗の60%のシェアを占める。3682店舗(店舗総数の80%)でドライブスルー調剤機能を持ち、殆どの店で1時間現像の機能を持つ。またコンビニエンスフードの品揃えは、間に合わせ食品の便利性要望を満たしている。


◆店舗スタイルの変遷

  2004年 % 1994年 %
総店舗数 4582 100% 1968 100%
フリースタンディング店舗 3754 82% 459 23%
24時間店舗 1351 29% 302 15%
1時間現像機能店舗 4511 98% 35 2%
ドライブスルー調剤機能店舗 3682 80% 253 13%


ウォルグリーンという企業は、2004年度フォーチュン紙による “Most Admired Company”(最も賞賛される企業)調査のフード&ドラッグ部門で第1位に選ばれた。エクセレントカンパニーという言葉が流行った1990年代、米国の企業はこのエクセレントカンパニーを目指して切磋琢磨した。しかし、エクセレントカンパニーとしては成長性と収益性が重要視されたため、エンロン事件など、会社を成長させるための法令違反や倫理観に欠ける事柄が浮上した結果、経営者が逮捕されたりして企業が消滅していった。ウォルグリーンが常に目指したのは、エクセレントカンパニーでなく、アドマイヤードカンパニー作りであった。アドマイヤードカンパニーの条件としては、成長性や収益性に加えてコンプライアンス(法令遵守)や倫理観が入ってくる。そのため創立者は、1930年代からロータリー倶楽部で使われている“Four Way Test”を取り入れ、従業員が自ら判断して行動する際に考慮すべき4つの言葉として、次の“Four Way Test”を全店舗の従業員控え室に掲示している。
  1. それは真実だろうか?
  2. それは関係する全ての人にフェアだろうか?
  3. それは良い関係とフレンドシップを作るだろうか?
  4. それは関係する全ての人に有益だろうか?

また店舗は地域に歓迎される存在でありたいという考えから、地域の雰囲気にマッチしたデザインが選択されたり、地域の不登校の学生に店長が自分の時間を割いて教育をしたり、教育機関(主に薬科大学や小学校)、小児糖尿病研究機関、米国心臓病協会、米国がん協会、ユナイティド・ウエイ等の大手募金機関になっている。

そして外部の人間をスカウトしてマネージメントレベルにつけるのでなく、出来るだけ社内の人間を昇進させるようにしている。それも、現場を経験していることが必須条件になっている。店長⇒ディストリクトマネージャー⇒副社長⇒社長⇒会長という具合だ。

ウォルグリーン社におけるマネージメントの勤続年数は、店長は12.5年、ディストリクトマネージャーは20.8年、ストアオペレーション・バイスプレジデントは27.8年である。これは、ウォルグリーン文化が骨の髄まで染み付いた人だけがマネージメントレベルになれるようになっているということだ。

日本のドラッグストアの中には、自社だけの成長しか頭になくて、優越的地位を乱用する企業を見受けるが、是非この“Four Way Test”を導入して、アドマイヤードカンパニーを目指して欲しい。これこそが顧客・従業員・取引先・地域社会からの信頼を獲得する道で、企業の長期的成長につながるからだ。




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