欧米ドラッグ最新事情 第23回
「米国調剤薬市場最新情報」
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2004年度の調剤薬の売上げ成長は金額ベースでは8.8%だが、枚数ベースでは2.3%と鈍化した。ユ99年度の20%(金額ベース)近い成長から見たら著しい鈍化だ。この鈍化の要因には、ジェネリックの普及、少ない新製品、患者の自己負担金額の増加、景気の鈍化、ホルモン療法調剤薬の副作用問題、カナダやメキシコからの調剤薬の輸入、スイッチOTCの促進などなどがあった。実際にユ03年との比較で、ユ04年度のホルモンやエストロジェン関連調剤薬の処方枚数は16%も落ちてしまった。風邪の流行も遅くスタートしたため、アンチヒスタミンは14%、ペニシリンは10%、咳止めは47%と下落し、前年と比較して風邪関連の調剤薬が不調であった。今後の調剤薬市場の追い風としては、製品価格の上昇、メディケア対象者(65歳以上の人々)への保険の拡大、高齢者の増加、メーカーの消費者に対する積極的な広告活動等が挙げられる。
患者の自己負担の増加は市場に大きな影響を与えた。自己負担の増加は医療費の抑制が目的だったが、薬による治療が必要な人も服用しなくなることで病気を重くし、その結果より高い医療費を呼ぶことになった。実際に糖尿病・喘息・胃酸過多の調剤薬自己負担が2倍になった為、それらの薬の使用は17〜23%減少したが、それらの病気による緊急病院の使用は17%、そして入院は10%増加したという皮肉な結果に終わった。
調剤薬のカナダやメキシコからの逆輸入は、米国の調剤薬市場に打撃を与えた。カナダからの輸入は700億ドルになるといわれている。FDAはそれが違法行為であることとして、市民に警告を与えている。それに加え、偽の調剤薬もメキシコ等から輸入されるようになっており、人々の安全に脅威を与え出している。
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◆調剤薬の売上げ成長の鈍化
年度 |
売上金額成長率 |
調剤枚数成長率 |
1999年 |
+19.3 |
+9.0% |
2000年 |
+15.1 |
+6.5 |
2001年 |
+17.0 |
+5.6 |
2002年 |
+12.3 |
+4.5 |
2003年 |
+11.4 |
+2.6 |
2004年 |
+8.8 |
+2.3 |
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ジェネリックは順調に成長し、金額ベースシェアでは8%程度だが、枚数ベースシェアでは43.6%を占めるようになった。ちなみにナショナルブランドは45.8%、ブランドジェネリックは10.6%であった。今後約510億ドル近くの市場性を持つ調剤薬のパテントがユ06年の末で切れるので、さらなるジェネリックの成長が見込まれる。このジェネリックの成長の要因は、医療費の高騰を抑えるために国や保険会社が推し進めていること(米国の医療費に占める薬の割合は11%だが、そのシェアが徐々に上がってきており、政府は薬のコストアップに神経を尖らせている)、小売業の利益率が高いこと、そして消費者がブランド調剤薬と同等の効能効果及び安全性があることに気がつき始めたからだ。
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◆増加するジェネリック薬シェア
年度 |
ジェネリック |
ブランドジェネリック |
ブランド |
金額 |
枚数 |
金額 |
枚数 |
金額 |
枚数 |
1998年 |
7.4% |
38.3% |
8.9% |
12.2% |
83.7% |
49.5% |
1999年 |
6.8 |
38.0 |
8.4 |
11.5 |
84.8 |
50.5 |
2000年 |
6.1 |
37.6 |
8.3 |
11.2 |
85.8 |
51.2 |
2001年 |
6.0 |
38.1 |
8.7 |
11.1 |
85.3 |
50.7 |
2002年 |
6.7 |
40.0 |
9.0 |
11.2 |
84.4 |
48.8 |
2003年 |
7.4 |
42.5 |
9.2 |
10.9 |
83.4 |
46.6 |
2004年 |
7.8 |
43.6 |
9.6 |
10.6 |
82.6 |
45.8 |
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2002年のピーク時に74%だった第三者機関(民間医療保険)適用の調剤薬のシェアは、ユ04年度は71%に落ちたが、それはメディケイド対象調剤がユ04年度に急激に伸びたからだ。一方現金調剤シェアは、ユ94年の45%からユ04年は13%になってしまった。これがドラッグストアの収益を圧迫している。
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年度 |
第三者機関
(民間医療保険) |
メディケイド |
現金 |
1994年 |
42% |
13% |
45% |
1997年 |
60 |
11 |
29 |
1999年 |
68 |
11 |
21 |
2000年 |
70 |
11 |
19 |
2001年 |
73 |
11 |
16 |
2002年 |
74 |
11 |
15 |
2003年 |
73 |
13 |
14 |
2004年 |
71 |
16 |
13 |
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(注)「メディケイド」は貧困層に対する政府保険 |
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市場別に見るとドラッグチェーン&ディスカウンターが36%で、調剤薬市場の市場シェアではトップだ。その後にメールオーダーや独立ドラッグが14%台で続いており、フードストアは約9%だ。著しいのはメールオーダーの成長で、保険会社はメールオーダーで薬を購入することを推進していることが多い。
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◆米国調剤薬市場別売上高
市場 |
売上金額 |
構成比 |
前年比 |
小売市場合計 |
1714億ドル |
73.2% |
+8.9% |
ドラッグストア+ディスカウンター |
841 |
35.9 |
+7.6 |
独立ドラッグ |
333 |
14.2 |
+5.6 |
フードストア |
206 |
8.8 |
+7.1 |
メイルサービス |
334 |
14.3 |
+17.1 |
非小売市場合計 |
627億ドル |
26.7% |
+8.8% |
病院 |
282 |
12.1 |
+7.9 |
クリニック |
217 |
9.3 |
+12.9 |
長期療養所/介護施設 |
105 |
4.5 |
+5.3 |
HMO(スタッフモデル) |
15 |
0.6 |
-1.9 |
その他 |
8 |
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総合計 |
2340億ドル |
100% |
+8.8% |
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チェーン別売上高を見てみると、エカードの1260店舗を買収したCVSはユ99年以来久しぶりに再度1位を獲得した。しかし1店舗当たりの調剤の売上高では、ウォルグリーンが17%高く、ウォルグリーンが店舗数を増やせばまた1位の座は逆転しそうだ。ディスカウントストアのウォルマートが3位、スーパーマーケットのアルバートソン(実際にはセイボンやオスコドラッグの数値も含む)が5位、クローガーが7位、セーフウエイが8位、アーホールドが9位と、ドラッグストア以外の業態が10社中5社を占め、他業態からの侵略の激しさを物語っている。しかし米国人が調剤で最も顧客満足度が高いと判定するのは独立ドラッグであり、彼らの復活が著しい。
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◆米国調剤薬売上高トップ10チェーン
企業名 |
売上金額 |
店舗数 |
店舗当り売上金額 |
1. CVS |
245億ドル |
5357 |
4.6百万ドル |
2. ウォルグリーン |
240 |
4480 |
5.4 |
3. ウォルマート |
141 |
3393 |
4.2 |
4. ライトエイド |
110 |
3382 |
3.3 |
5. アルバートソン |
100 |
2000 |
5.0 |
6. ジーン・クーチュ |
72 |
2182 |
3.3 |
7. クローガー |
54 |
1879 |
2.9 |
8. セーフウエイ |
42 |
1272 |
3.3 |
9. アホールドUSA |
28 |
844 |
3.3 |
10. メディシン・ショッペ |
25 |
1391 |
1.8 |
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