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■第28回「2005年度のウォルグリーンの実績」(パート1)

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欧米ドラッグ最新事情 第28回
「2005年度のウォルグリーンの実績」(パート1)

2005年8月31日に会計年度を終えたウォルグリーンの業績が発表され、31年連続増収増益という新たな金字塔を打ち立てた。特筆すべきことは、2度にわたるハリケーン(リタ及びカトリーナ)によってルイジアナ州、ミシシッピー州、テキサス州の75店舗が被害にあい、現在でも30店舗近くは閉められたままの状態にあること、しかも商品の廃棄処分や店舗ダメージで55百万ドルにのぼる余分な経費がかかった上でのこの成長ということだ。

売上は422.0億ドル(前年比12.5%増)、税引き後の純利益は15.6億ドル(前年比15.5%増)の成長であった。既存店の業績は、売上において前年比10.9%の成長であった。粗利益率は27.9%、販売管理費は22.2%で、営業利益率5.7%を確保し、株主資本収益率は18.3%となっった。この数値は、他のチェーンドラッグが12%以下という実態を見ると、いかに成長性及び収益性の高い経営をしているかが分かる。

この業績は全米45州とプエルトリコで展開している4,953の店舗と3つのメールサービスの施設で、従業員179,000人によってなされた結果である。新店舗は435店舗であったが、64店舗の閉鎖で、純増は371店舗であった。閉鎖した店の場合の殆どは、リロケーションといって、閉鎖した店のすぐそばのより良い立地に店を出している為に、今までの顧客に迷惑をかけるどころか、さらなる便利性を提供している。他のチェーンドラッグが規模拡大のために合併戦略を取るのに反して、ウォルグリーンはあくまで自前で店舗を増加させている。吸収されるような企業には、消費者から見放されるような悪い企業文化が根付いていることが多く、それが、顧客第一をモットーにするウォルグリーンの企業文化をおかしなものにする危険があるからだ。現在店舗の平均年齢は5.4歳と若く、お店はいつもクリーンですがすがしい。

一日の来店客は4.4百万人、店舗平均売場面積は311坪で、店舗平均の年間売上は8.3百万ドルである。坪当たりの売上は年間26,892ドルになる。

調剤薬の売上は、全店で13.4%成長し、既存店では9.8%の成長であった。これを商品構成比で見てみると、全売上の64%を占めており、年々その構成比を増加させている。第三者機関(マネージドケア、政府及び民間保険)関連の調剤売上は、ウォルグリーンの全調剤売上の93%を占めるようになり、現金調剤は7%に落ちてしまった。これが調剤の粗利益を落とす大きな問題になっている(1990年には35〜40%の利益があったが、現在では22%程度)。調剤利益率の向上の為にジェネリックの活用を推進しているが、これはヘルスケアコストを削減するのに加えて、店に利益を運ぶと言うことでWin-Win商品になっている。ジェネリックの推進は逆にナショナルブランド処方薬にダメージを与えており、ウォルグリーンではNB処方薬の売上は前年比で2.4%減少した。またシニアディビデンドというプログラムを実施しているが、これは55歳以上の調剤の現金客は、支払った金額の10%をウォルグリーンの店で使うことが出来るというプログラムである。例えば、60ドル支払った場合、6ドルを他の商品の購入に活用出来るのである。シニアディビデンドカードは勿論貯めることも出来るし、どのウォルグリーンでも使用することが出来る。これは顧客のロイヤルカスタマー化と調剤の利益率向上の為の戦略である。

ウォルグリーンの調剤枚数は小売全調剤の15%のシェアを占めており、米国一の大きな調剤の売上を持つ企業である。高齢化社会において、命を救う新しい薬の市場化は、調剤市場を非常に明るくしている。またシニア人口の増加(65歳以上人口は2005年度37百万人、2025年63百万人)に伴って、彼らがこれまで以上にクスリにお世話になってきていることも、この市場の成長要因になっている。例えば、55才以上の処方回数で見てみると、1992年には平均年間17回だったのが、2000年には26回と急上昇しており、さらに2010年には36回になると推測されている。メールオーダー調剤の急速な成長に対抗するため、「アドバンテージ90」というプログラムを調剤で開始した。メールオーダーの場合、保険会社は90日分の処方薬の提供を許しているが、小売店経由の場合は30日しか認めていない(保険会社がメールオーダー会社を所有しているケースが多く、有利にするために仕組まれている。)。このことが小売店経由の調剤薬シェアをメールオーダーが奪う要因の一つになっているため、ウォルグリーンでは、メールオーダーと同じ条件で顧客に調剤薬を渡せる仕組みにした。但し、顧客の3回の自己負担分のうち、2回分をウォルグリーンが負担している。

ウォルグリーンでは商圏の人種に合わせる為に、日本語、中国語、フランス語、ポルトガル語、ポーランド語、ロシア語、ベトナム語、スペイン語、英語等、18ヶ国語で調剤のラベルがプリントされるようになっており、現在では英語以外の言語の調剤ラベルを求める顧客が増加している。

権威あるフォーチューン誌による“最も賞賛される企業のフード&ドラック部門モで、2005年度も前年度に引き続いてNo.1の地位を獲得した。雑誌バロンズによると、ウォルグリーンは世界で最も尊敬される企業トップ10の中の一社だ。


◆ウォルグリーン2005年度の業績

項目 2005年度 % 前年比
売上 42202百万ドル 100.0% 112.5%
粗利益率 10202百万ドル 27.2% -0.1ポイント
販売経費率 8055百万ドル 21.5% -0.1ポイント
純利益 1360百万ドル 3.6% 115.7%
ROE 17.6% - +0.1ポイント


◆ウォルグリーン成長率の推移

項目 2005年 2004年 2003年
売上高 12.5% 15.4% 13.3%
税引き後利益 15.5% 15.9% 15.6%
既存店舗売上高 8.2% 10.9% 8.6%
調剤薬売上高 13.4% 17.8% 17.4%
既存店舗調剤薬売上高 9.8% 14.0% 13.2%
セルフ売り場売上高 11.1% 11.7% 7.5%
既存店舗セルフ売り場売上高 5.5% 6.1% 2.0%


◆ウォルグリーン粗利益率と販売管理費の推移

項目 2005年 2004年 2003年
粗利益率 27.9% 27.2% 27.1%
販売管理費 22.2% 21.5% 21.4%
営業利益率 5.7% 5.7% 5.7%
5.7% 18.3% 17.7% 17.5%


◆販売構成比の推移

項目 2005年 2004年 2003年
調剤薬構成比 63.7% 63.2% 62.0%
調剤薬における保険対象売上構成比 92.7% 91.7% 90.6%
店舗数 4953 4582 4227


◆販売構成比の推移

    2005年 2004年 2003年
店舗数 新店 435 436 430
閉店 64 81 86
総店舗数(注1) 4953 4582 4227
売場面積 総売場面積 1538528坪 1414639坪 1298167坪
店舗当り売場面積 311坪 309坪 307坪
商品構成 調剤薬 64% 63% 62%
OTC 11% 12% 12%
化粧品・トイレタリー 25% 25% 26%
ジェネラルマーチャンダイズ

(注1) 29の調剤専門店と3つのメールオーダーサービス施設を含む





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