欧米ドラッグ最新事情 第30回
「市場が広がるジェネリック薬」
|
日本ではジェネリック薬の普及はまだ充分に促進されていないが、今後医療費の削減のために使用の増加は間違いないだろう。米国のケースを見てみると、GDPの15%弱を占める全医療費(19000億ドル弱)の内訳は、病院医療費33%、医師技術料(歯科医師含む)28%、その他個人医療費13%、薬剤費11%、ナーシングホーム7%が主な項目だ。日本と比較すると薬剤費の構成比は遥かに低いが、それでも医療費のコスト抑制の動きからジェネリックの使用が2002年以降急速に進んでいる。どの位削減されるかというと、エクスプレス・スクリプト社によると、2004年だけでもジェネリック薬を効果的に使用しなかったことで200億ドルの薬剤費コスト抑制のチャンスを失ったということだ。
下記の表の通り、2002年以降ジェネリックの成長が著しいのが金額ベース及び処方数ベースでも分る。特に直近の2005年9月までの1年間を金額ベース及び処方数ベースで見てみると、全処方薬は約6%の成長だが、ジェネリックは約20%も成長している。
|
◆全処方薬とジェネリックの成長性(前年比)の比較(金額ベース)
年度 |
全処方薬 |
ジェネリック |
2000年 |
15.4% |
4.2% |
2002年 |
13.3% |
26.1% |
2004年 |
8.9% |
11.1% |
2005年9月までの1年間 |
6.3% |
20.1% |
|
◆全処方薬とジェネリックの成長性(前年比)の比較(処方数ベース)
年度 |
全処方薬 |
ジェネリック |
2000年 |
6.2% |
4.5% |
2002年 |
5.2% |
10.0% |
2004年 |
3.0% |
10.1% |
2005年9月までの1年間 |
6.1% |
19.2% |
|
|
ナショナルブランドとの関係を見てみると、ジェネリック(ブランドジェネリックを含む)は処方数では2002年に初めてナショナルブランドを追い越し、2004年ベースでは56.4%までになった。しかし単価が安いため金額べースでは17.4%程度しかない。
|
◆ジェネリック構成比(処方数ベース)
年度 |
ブランド |
ブランドジェネリック |
ジェネリック |
1998年 |
49.5% |
12.2% |
33.3% |
2000年 |
51.1% |
11.3% |
37.6% |
2002年 |
48.7% |
11.4% |
39.9% |
2004年 |
43.6% |
10.6% |
45.8% |
2005年9月までの1年間 |
40.8% |
10.0% |
49.2% |
|
◆ジェネリック構成比(金額ベース)
年度 |
ブランド |
ブランドジェネリック |
ジェネリック |
1998年 |
83.7% |
8.9% |
7.4% |
2000年 |
85.6% |
8.5% |
6.8% |
2002年 |
84.3% |
9.0% |
6.7% |
2004年 |
82.6% |
9.7% |
7.7% |
2005年9月までの1年間 |
81.5% |
9.8% |
8.7% |
|
|
このジェネリック使用の増加は、国にとって医療費の高騰抑制になるだけでなく、保険会社にとってはコストを安く抑えられる、ドラッグストアにとってはナショナルブランドよりはるかに利益率が高い、そして患者にとっては保険の対象になっており(保険の種類によってはナショナルブランドは対象外で、ナショナルブランドを望む場合は自己負担で購入)、自己負担も低い金額で済む、と4者にとって好都合なのだ。どの位値段が違うかというと、2004年度ではナショナルブランドの平均単価は96.01ドルだが、ジェネリックは28.74ドルと1/3のコストだ。
全米ドラッグストアNo.1のウォルグリーン社CEOのバーナウアー氏は「今後20年間で65歳以上の人口が75%以上増加する。高齢化は処方薬に世話になる人の増加を意味するので低価格のジェネリックの普及は患者にとっても国にとっても必須だ。ウォルグリーンはジェネリックの使用を促進しており、2005年度は処方数の59%がジェネリックであったが、2006年度末までに70%弱になると予測する。またジェネリックの積極的活用により、2006年度11月30日末の第一四半期(ウォルグリーンの期末は8月末)は、前年同期と比較すると荒利益率が1.6ポイント増加し27.54%になった。このようにジェネリックは企業の利益にも貢献する大切な商品だ。」と述べている。
全米第二位のドラッグストアCVSは2005年度370億ドル(前年比21%増)であったが、既存店舗が6.5%成長し、そのうち調剤の既存店舗は7%の売上げ増、セルフ売場は5.5%成長した。ジェネリックドラッグの使用を積極化しており、2005年度の純利益率が12億ドルで前年比31.8%の増加だ。売上げの70%を処方薬であげるCVSにとって、ジェネリックは利益を運ぶキャッシュマシーンだ。
このジェネリック薬の市場がさらに広がる。下記の表の通り、2006年度に72ブランドの処方薬のパテントが切れる。そして2008年までに380億ドル、2010年までに500億ドルの売上規模処方薬のパテントが切れるので、ジェネリック市場がさらに膨らむということだ。
|
◆パテントが切れる代表的な処方薬
|
処方薬 |
種類 |
2005年度売上げ規模 |
2006年 |
Plavix |
高血圧症用薬 |
33億ドル |
Zocor |
高脂血症用薬 |
31億ドル |
Zoloft |
抗うつ薬 |
26億ドル |
Ambien |
催眠鎮静薬 |
15億ドル |
Pravachol |
高脂血症用薬 |
13億ドル |
Zofran |
鎮吐薬 |
10億ドル |
2007年 |
Norvasc |
高血圧症用薬 |
22億ドル |
Risperdal |
抗精神病薬 |
19億ドル |
Zyrtec |
抗ヒスタミン薬 |
14億ドル |
Lontrel |
高血圧症用薬 |
11億ドル |
2008年 |
Advair Diskus |
喘息治療薬 |
33億ドル |
Effexor XR |
抗精神病薬 |
26億ドル |
Forsamax |
骨粗鬆症用薬 |
19億ドル |
Topamax |
頭痛用薬 |
13億ドル |
Toprol XL |
高血圧症用薬 |
13億ドル |
|
|
薬剤費のコスト抑制のためには、ジェネリック使用率のカテゴリーによるばらつきをなくさなければならない。特に胃潰瘍、炎症、うつ、高血圧そして高コレステロール等のカテゴリーの使用率が低い。例えば胃腸薬のジェネリック使用は31%だが、これを95%まで引き上げることが可能であり、そうなれば年間54億ドルのコスト削減が可能になる。高コレステロールカテゴリーでは7%しかジェネリック使用率がなく、70%まで使用率が上がると年間51億ドルのコスト削減になる。
|