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■第33回「北米ドラッグストア業界2005年の業績及び2006年の展望」

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欧米ドラッグ最新事情 第33回
「北米ドラッグストア業界2005年の業績及び2006年の展望」

◆北米(米国及びカナダ)のドラッグストアの売上と収益

項目 2005年 2004年 前年比
チェーンドラッグの売上 1692億ドル 1,571億ドル +7.7%
独立店ドラッグの売上 579億ドル 544億ドル +6.4%
ドラッグストアトータル売上 2271億ドル 2,115億ドル +7.4%
チェーンドラッグの売上シェア 74.5% 74.1% +0.4ポイント
チェーンドラッグ店舗当り平均売上 6.3百万ドル 6.1百万ドル +0.2百万ドル
チェーンドラッグ既存店売上げ成長率 6.0% - -
独立店店舗当り平均売上 2.8百万ドル 2.6百万ドル +0.2百万ドル
チェーンドラッグの税引き後利益 1.75% 1.70% +0.05ポイント


◆北米ドラッグストアの店舗数

項目 2005年 2004年 前年比
チェーンドラッグの店舗数 23,475店 23,177店 +298店
独立店ドラッグの店舗数 20,651店 20,719店 -68店
ドラッグストア店舗数トータル 44,126店 43,896店 +230店
チェーンドラッグの店舗数シェア 53.2% 52.8% +0.4ポイント
チェーンドラッグの平均売場サイズ 320坪
(11,550sqft)
307坪
(11,050sqft)
+13坪
(500sqft)


  1. 順調に成長したドラッグストア業界

    CDRスペシャルレポートによると、2005年度の北米ドラッグストア業界は堅調に伸び、7.4%の成長で2271億ドルを記録した。これは小売業全体の5.2%に比べて大きな成長率であった。店舗数も、チェーンドラッグの店舗数の増加により、前年より230店舗増えた。

    チェーンドラッグの2005年度売上げの伸張は、2003年度の8.2%で、2004年度の8.3%を下回ったものの7.7%の成長を記録した。店舗当りの売上は、平均売り場面積が前年より13坪広がったこともあり6.3百万ドルと0.2百万ドル上昇した。素晴らしいのは、既存店舗の売上げが6.0%成長したことだ。ドラッグストア全体の売上げに占めるチェーンドラッグの売上げは、前年よりわずかに伸びて74.5%のシェアを記録した。税引き後利益は前年より0.05ポイント向上し、1.75%になった。店舗数の増加は2003年度236店舗、2004年度143店舗であったが、2005年度は230店舗増加した。ウォルグリーンの400店舗近い増加がなければマイナスであった。このチェーンドラッグ業界を支えているのがトップ2社のウォルグリーンとCVSである。ウォルグリーンは、2004年度に続いてこの年の「世界で最も尊敬される会社」のスーパー&ドラッグ部門で第一位を獲得した。これは企業の成長性・収益性のみならず、法令順守や倫理性等の調査に基づいて判断された結果である。リージョナルチェーンも大活躍したが、彼らはHBCに関するソリューションを次々と打ち出す戦略をとった。

    一方、独立店ドラッグの売上げは21世紀に入ってから復調しており、前年対比で見てみると2004年の6.3%と並ぶ6.4%の成長を記録した。しかし店舗数は68店舗減少した。しばらく前までは、大手チェーンドラッグの攻勢により、独立ドラッグ店は今後存続出来ないだろうと予測されていたが、1990年代の終盤から持ち直し、21世紀に入ってからは成長し始めたばかりか、逆にチェーンドラッグに対して少しずつ脅威を与え始めている。これは主に高齢社会の到来によって、人々が顔なじみの店長や薬剤師、コスメティシャンそして従業員のいる独立ドラッグ店を選択し始めたことによる。独立店も店舗規模の拡大、魅力的な商品構成、そしてロイヤルカスタマー作りに励んだことが巻き返しに大きく働いた。特に大手が苦手とする介護、ナチュラルビタミン、ハーブ、ミネラルのナチュラルファーマシー、糖尿病やウイメンズヘルス等の生活習慣病対策が消費者に受け入れられた。

    吸収・合併の大きな動きとしては、大手スーパーマーケットのアルバートソンが売却され傘下のセイボンがCVSドラッグに吸収されたことだ。東部出身のCVSとして西海岸を制覇するために西海岸で歴史の古いセイボンを傘下に収めたことは今後の成長に勢いをつけるだろう。

  2. 明るいドラッグストア業界の将来

    2006年度売上げの成長率は小売業全体で5%程度と考えられているが、ドラッグストア業態は6~8%の成長が見込まれている。その中で調剤薬は枚数ベースで2~4%の増加、そして売上げでは7~10%の成長が予測されている。セルフ売り場の売上げは低い成長が予測されている。純利益額では売上げの成長率より高い9〜12%の成長予測だが、これは厳しいコストコントロールと調剤売上げの90%を占める保険会社との交渉力を高めより利益を獲得する戦法を取るからだ。ドラッグストア業態の成長を支えるのは高齢社会(2004年の国勢調査によると65歳以上の人口は35百万人で、構成比では12.4%になる。2030年には66.4百万人で18.9%、そして2050年には86.7百万人で21%と予測されている。)、ロハスライフスタイルの人々の増加(健康と環境に関心の高い人々で6千万人の人口層)、女性の社会進出、シングルファミリーの増加(10年後にはシングルファミリーが最大の世帯構成人数層になる予測)、調剤市場の拡大、ジェネリック市場の拡大、セルフメディケーションの促進によるヘルスケア市場の拡大、順調な経済成長によりセルフ売り場の売り上げ拡大などが追い風となり、ドラッグストア市場の将来を明るくしている。高齢化が何故チェーンドラッグにとって追い風かと言うと、年齢が上がるほど心臓病・脳卒中・糖尿病、関節痛・がん・欝・インポテンツ・骨粗鬆・アルツハイマーなどの病気し、薬の需要が増加するからである。現に60歳以上の人々はそれ以下の人々の3倍の調剤薬を使用し、処方箋の割合は枚数において33%、金額ベースで42%のシェアを持っている。又価格の高い新薬の登場や、手術より薬による治療の増加は、ヘルスケア産業にとって大変な追い風なのである。これらの動きを見て、機関投資家はドラッグストアが他の業態より成長性が高いと評価しているのだ。

  3. ドラッグストアの逆風

    逆風はなんといっても他業態との戦いだ。メールオーダー調剤の成長が著しく、現在調剤市場の19%を占めているが、年々成長して30%に到達するという予測もある。 フード&ドラッグのコンビネーションストア(コンボストア)はスーパーマーケットとドラッグストアが同じ屋根の下でビジネスを展開している業態だが、売り場の1/3以上を健康美容商品や雑貨のノンフードにあて(25000以上のアイテム数)、売上げの15%以上をノンフードから上げる業態だ。「ワンストップショッピングの便利性」を武器にしている。

    彼らの調剤はコンボストアの3%の売上げ構成比を占めている。以前より専門性が進み疾病管理プログラム、インフルエンザの予防接種、血圧検査、血糖値検査などのヘルスチェックもしてくれる。

    ディスカウントストアは、大手のKマートは不振で、ウォルマートは出店問題や労働訴訟など数多くの問題を抱えているが、それらの業態も調剤及びHBAに力を入れ、低価格でドラッグストアに脅威を与えている。






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