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■第36回「拡大するロハス層とその人たちに愛されるお店」

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欧米ドラッグ最新事情 第36回
「拡大するロハス層とその人たちに愛されるお店」

ロハス(LOHAS = Lifestyle Of Health And Sustainability)、つまり健康と環境に関心が高いライフスタイルは1990年代の後半に米国の社会学者が名付けた概念だ。現在米国のロハス層は成人人口の27%の約7000万人おり、40兆円市場と言われている。成熟社会における新たな消費者層の生活様式だ。日本も成人人口の約30%がロハス層だと言われている。高学歴、高収入で購買力も高い。関連市場は衣・食・住に幅広く、2015年には20兆円市場になるとも言われている。

高度成長期のマスプロダクション時代の「大量生産大量消費」「廉価」「効率」至上主義と異なり、「身体にやさしい」「地球環境に優しい」をキーワードに、「オーガニック」「フェアトレード」「地産地消」「グリーンコンスーマー」を好む。同時に「センス」や「おしゃれ」を求め、野暮を嫌う。価値観が同じ企業の商品を購入する傾向が強く、また同じ機能なら20%高くても環境配慮の商品を購入するという特徴を持つ。そのため米国ではヨガ、自然食レストラン、代替医療、環境配慮型エコツーリズム、風力発電、エコカー、スパが大流行だ。

このロハス層の人たちの多くはベビーブーマーと呼ばれる、1946年〜1964年の間に誕生した7600万人のベビーブーマー(日本の団塊の世代にあたる)の人たちだ。ヒッピー、ヤッピーなど米国の色々な流行やムーブメントを作ってきた人々だ。

健康に強い関心を持つロハス層は、薬の副作用の増加(米国の死因の第4位が、薬の副作用・間違った服薬・きちっと服薬しなかった等の薬に関わる事柄)に対して、身体に優しい代替医療で健康を維持したり、新建材から来るシック症候群を避けるために住宅に木材や珪藻土を使用したり、衣服は化学繊維でなく綿・羊毛・麻などの自然素材を、食べ物はオーガニックを好む等、ナチュラル志向が強い。

1990年に40億ドルであったオーガニックフーズ、ナチュラル化粧品、ナチュラル家庭用品、ナチュラル衣料、ナチュラルメディシン(ナチュラルなビタミン・ミネラル・ハーブ・ホメオパシ等)市場が、2000年に250億ドルになり、2010年には500億ドル市場にもなると予測する人もいる。このように成長する理由の一つは、身体に良いことに加えて環境にやさしいということである。子供や孫に良い環境を残してあげたいという気持ちが強い。こうした時代の流れによって注目されている企業を紹介しよう。


  1. ホールフーズマーケット

    1980年に設立され、テキサス州オ−スチンに本社を置く。大手スーパーマーケットがスーパーセンターやホールセールクラブに押されて不振な中、毎年20%近い成長をしており、約180店舗で年間6000億円の売上げをあげる企業に成長した。米国人の多くが食品を選ぶときに栄養素や身体に良いことを基準にしているが、健康に気を使うシニア層の増加で、オーガニックフードに対する関心はより強まっている。「医食同源」をコンセプトにする「ホールフーズマーケット」はその消費者の意向を上手につかみ、大躍進したのだ。ホールフーズマーケットの特徴は、企業の品質基準を読めば一目瞭然だ。


    「ホールフーズのクオリティゴ−ル」

    1. 我々はナチュラル及びオーガニック商品を品揃えする。防腐剤や人工着色など人工的に手を加えるより、自然の状態で食べた方が味も良く、栄養面でも最良だからだ。

    2. 我々のビジネスは最高の品質基準の食品を、競争力のある価格で販売することだ。そのため我々は栄養、新鮮度、そして味の質を常に評価している。

    3. 我々は販売するどの商品も注意深くチェックする。
      防腐剤・人工着色料・人工香料・人工甘味料等を一切使用していない食べ物を取扱う。

    4. 我々は味の良い食べ物を提供する。

    5. 我々は新鮮で、安全な食べ物を提供する。

    6. 我々はオーガニック食品に力を入れて提供する。

    7. 我々は健康及び幸せに貢献できる食べ物を提供する。


    また、消費者が毎日の食事から十分な栄養を摂取することが難しいという考えから、「ホールボディ」というサプリメントコーナーを設けている。品揃えされているサプリは全てがナチュラル成分で、癒しの雰囲気を作るために木目の什器や床で売場が作られ、専門性の高いカウンセリングスタッフを配備している。店によってはマッサージ師の配置や健康作りのための料理教室も行われている。


  2. エレファントファーマシー

    2002年11月にカリフォルニア州バークレーに誕生。店舗面積360坪だが、ウォルグリーンのような一般的なドラッグストアとは大きな違いを持っている。それは健康と環境に関心の高い人々をターゲットにした店であることだ。ウェルネスソリューションストアをコンセプトに、4つの柱を持っている。

    1. 商品
      企業コンセプトを満たすために世界中からウェルネスに適した商品が集められており、調剤、OTC、代替医療(ホメオパシ・ハーブ・漢方等)、サプリメント、自然化粧品、オーガニックフード、オーガニックリカー、ペットフード、ナチュラル雑貨、ビデオ等を品揃えしている。最近は日系スーパーマーケットから寿司を仕入れて販売しているが良く売れているようだ。ペットフードも当然オーガニックだ。またエレファントベビー、エレファントキッズというコーナーがあるが、小さいときからの健康やきれいな肌作りということで、ベビーやキッズのサプリやサンケア商品が充実している。また雑貨ではセブンス・ジェネレーションというナチュラル衣料洗剤がよく売れているが、7世代に渡って使用されても地球環境に害を与えないという商品なのだ。

    2. サービス
      カウンセリングを充実させており、高い専門性を持った薬剤師、ハーバリスト、漢方の専門家、栄養士、コスメティシャンがカウンセリングルームで患者一人一人に丁寧なカウンセリングを行っている。またマッサージ師も配置し、1分1ドルでマッサージの提供をしている。風邪のシーズンになると予防接種も行われる。店の奥には健康に関する書籍コーナーがあり販売されている。来店出来ない人のためには配達もしているので、病気がちの人そして忙しい人には大変便利だ。

    3. 消費者啓蒙
      100以上の無料クラス(ウイメンズヘルス・代替医療・シニアウエルネス・オーガニック・ボディ&ソウル・ヨガ・笑い・音だし、その他多種類)を提供している。

    4. インテリジェントな雰囲気
      パワー・オブ・カラー、つまり色の力を活用して人々にウェルネスを提供するという考えから、アースカラー(土色)やグリーンをベースに店内を統一している。


この他にもナチュラルフードスーパーのワイルドオーツや、ドラッグストアでは統合的に健康作りを目指すコンセプトで全米に11店舗を構えるファルマカ(Pharmaca Integrative Pharmacy)等がロハスの人々に愛されている。
これらの企業が支持されている理由は、健康や環境に関する「ソリューション」機能の提供と、商品に対する「こだわり」だ。日本にも間もなくこの流れがやって来る。



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