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■第37回「最近の米国調剤薬市場概況(パート1)」

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欧米ドラッグ最新事情 第37回
「最近の米国調剤薬市場概況(パート1)」

2005年度(2006年6月末までの1年間)の調剤薬の売上げ金額は4.6%と成長が非常に鈍化している。この数字は1969年以来最低の伸びで、二桁成長の時代は終わったと言う人もいる。2000年の15%、2001年の17%、2002年の12%、2003年の11%、2004年の9%という成長度を見れば鈍化の状況が一目瞭然だ。この鈍化の原因として、廉価なジェネリックの普及(多くのブランドのパテントが失効し、ジェネリック薬が参入し易くなった)、少ない新製品、患者の自己負担額の増加により調剤薬を避ける人の出現、カナダやメキシコからの調剤薬の輸入(同じ調剤薬が輸入により安く手に入る)、偽調剤薬の登場、スイッチOTCの促進などがあげられる。

業態別に見ると、ウォルグリーンやCVSに代表されるチェーンドラッグが首位の座を保っている。チェーンドラッグが首位を保っている要因は何と言っても、薬歴完備のためチェーンのどの店舗へ行っても処方してもらえること、24時間営業、クイックサービスなどの便利性だ。独立ドラッグは2位の座をメールオーダーに譲り3位になった。しかし独立ドラッグも顧客への親身なサービスや専門的なカウンセリングにより2000年以来成長を継続している。メールオーダーは前年比7.6%と最大の成長を示した。しかし今までの2桁成長は達成できず近年では一番低い成長率だった。それは保険会社の強制的にメールオーダーを使わせるシステムに対する消費者の反発、一般ファーマシーでのフェース・ツー・フェースのコミュニケーションやカウンセリングを求める消費者の増加、ファーマシーによる90日分調剤薬の提供(今まではメールオーダーの独壇場であった)、コミュニティファーマシーによる親切な接客やサービスの提供、メールオーダーによるカウンセリング満足度の低さなどの影響が出たことによる。

スーパーマーケットは2.5%と一番低い成長率だったが、スーパーマーケット業界の不振と、それから脱却するためにもう一度食の専門性を高めていることが影響している。

ウォルマートに代表されるマスマーチャンダイザーも今まで毎年大きな成長を記録したが、その成長が鈍化し始めた。今までの成長はどちらかというと調剤機能を持つ店を増やすことによるものだったが、ウォルマートのようにほぼ100%近くの店で調剤機能を持つようになった今、これから成長するためには既存店舗での売上げの成長が必要になっている。


◆2005年度調剤薬小売市場別売上げ

市場 売上金額 構成比 前年比
チェーンドラッグ 945億ドル 41.0% +4.4%
メールオーダー 439億ドル 19.1% +7.6%
独立ドラッグ 418億ドル 18.2% +3.5%
スーパーマーケット 276億ドル 12.0% +2.5%
マスマーチャンダイザー 225億ドル 9.8% +4.6%
合計 2303億ドル 100.0% +4.6%


このような成長鈍化があるにもかかわらず、調剤薬市場に明るい将来が予測されているのには、人口の高齢化(1946年〜1964年に生まれた76百万人のベビーブーマーの最初の年の人が2005年に60歳に入り、これから毎年400万人以上が60歳台になる。また2030年までには65歳以上の人口が71.5百万人になり、現在13%のシェアが20%になると予測されている。)、メディケア対象者(65歳以上の人々)への保険適用の実施、製品価格の上昇などの要因が挙げられる。米国では50歳になると「pill-taking age」つまり薬の世話になる年代に入ったと言われるが、年齢が上がるほど薬の需要が増加するのだ。また医学の分野でも、外科手術より薬による治療が増加し、薬の需要が高まっている。

小売ファーマシーにとっての大きな問題点は、調剤薬の利益率の縮小だ。特に貧困層対象のメディケイド及び65歳以上の人対象のメディケアの患者の調剤薬に関し、国の医療費の高騰抑制政策はファーマシーに入る利益をさらに薄くする方向にある。また民間保険会社もファーマシーの利益を縮小する傾向にあり、ウォルグリーンでさえ23%程度の利益しか与えられていない。ドラッグストアによっては、適切な利益を提供してくれない公的保険や民間保険に対して取り扱いを拒否するところも出てきている。

小売ファーマシーはこの利益の圧迫に対する対抗手段として、ジェネリックの使用を大きく拡大している。ジェネリック薬の売上げは、2005年度は21%も増加し223億ドルの市場になった。処方箋数ではついに60%に達し、ブランド処方薬は40%に落ちた。2001年にジェネリックの処方数シェアが50%に達してから、4年という短期間で60%になってしまったのだ。しかし金額シェアではブランドが圧倒的に高く、ジェネリックは19%しか獲得していない。ブランド品を製造するメーカーは、ジェネリック薬に対する対抗策として直接消費者にテレビ・雑誌などのマスメディアを使用してブランド調剤薬をPRするDTC(Direct to Consumer)戦略をとっている。

今後向こう5年間で640億ドル市場のブランド薬のパテントが切れること、現在市場にあるブランド薬の1/4のパテントが10年後までに切れることから、ジェネリックの将来は明るいと予測されている。


◆増加するジェネリック薬シェア

年度 ジェネリック ブランドジェネリック ブランド
金額 枚数 金額 枚数 金額 枚数
1999年 6.8% 38.0% 8.4% 11.5% 84.8% 50.5%
2000年 6.1 37.6 8.3 11.2 85.8 51.2
2001年 6.0 38.1 8.7 11.1 85.3 50.7
2002年 6.7 40.0 9.0 11.2 84.4 48.8
2003年 7.4 42.5 9.2 10.9 83.4 46.6
2004年 7.8 43.6 9.6 10.6 82.6 45.8
2005年 8.9 50.1 9.8 9.8 81.3 40.0





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