欧米ドラッグ最新事情 第38回
「最近の米国調剤薬市場概況(パート2)」
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◆トップ20調剤チェーン
順位 |
会社名 |
業態 |
調剤売上
(百万ドル) |
前年比
(%) |
調剤売上
構成比(%) |
店舗数 |
調剤
店舗数 |
1 |
CVS |
Drg |
28900 |
+34 |
68 |
6171 |
6071 |
2 |
ウォルグリーン |
Drg |
27350 |
+15 |
64 |
4953 |
4953 |
3 |
ウォルマート |
DS |
11036 |
+21 |
5 |
3289 |
3289 |
4 |
ライトエイド |
Drg |
10900 |
+1 |
63 |
3323 |
3323 |
5 |
ブルックス・エカード |
Drg |
5500 |
NA |
67 |
1853 |
1853 |
6 |
クローガー |
Spr |
5450 |
+11 |
9 |
2507 |
1913 |
7 |
スーパーバリュー |
Spr |
3600 |
NA |
8 |
2653 |
956 |
8 |
セーフウエイ |
Spr |
3100 |
+11 |
8 |
1775 |
1332 |
9 |
メディシン・ショップ |
Drg |
2520 |
0 |
97 |
1066 |
1066 |
10 |
シアーズ |
GMS |
2400 |
-8 |
4 |
3900 |
1117 |
11 |
ロングス |
Drg |
2300 |
+6 |
49 |
477 |
477 |
12 |
アホールドUSA |
Spr |
2100 |
-16 |
9 |
840 |
675 |
13 |
アルバートソン |
Spr |
1700 |
NA |
17 |
655 |
453 |
14 |
ターゲット |
DS |
1580 |
+13 |
3 |
1397 |
1150 |
15 |
パブリックス |
Spr |
1200 |
+29 |
5 |
876 |
636 |
16 |
コスコ |
WC |
1100 |
+19 |
2 |
346 |
331 |
17 |
H-E-B |
Spr |
882 |
+4 |
8 |
300 |
193 |
18 |
サムズ・クラブ |
WC |
876 |
+15 |
2 |
567 |
441 |
19 |
ジャイアントイーグル |
Spr |
780 |
+8 |
14 |
216 |
181 |
20 |
デュエンリード |
Drg |
715 |
-12 |
45 |
250 |
250 |
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(Drg=ドラッグストア DS=ディスカウントストア Spr=スーパーマーケット
GMS=ジェネラルマーチャンダイズストア WC=ホールセールクラブ) |
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調剤薬売上げランキングを見てみると、CVSが売却されたエカードの半分の店を購入した結果、第1位に躍り出た。自前路線を行くウォルグリーンは第2位になったが、店舗辺りの処方薬の売上げはまだウォルグリーンの方がCVSより多い。第3位にディスカウントストアのウォルマート、第6位クローガー、第7位スーパーバリュー、第8位セーフウエイと、いずれもスーパーマーケットが占めている。第10位にシアーズ(Kマートを含む)が入っている。このように見ていくと、調剤薬売上げトップ10では、なんとドラッグストア以外の他業態5社が占めているということだ。
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◆薬に関する情報源として、各業態における薬剤師の信頼度(2006年)
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大変信頼する |
信頼する |
普通 |
信頼しない |
全く信頼しない |
独立ドラッグ |
76.0% |
18.0% |
4.0% |
1.0% |
1.0% |
スーパー |
67.0 |
26.0 |
6.0 |
0.5 |
0.5 |
マスマーチャンダイザー |
65.0 |
27.0 |
7.0 |
0.5 |
0.5 |
クリニック |
64.0 |
27.0 |
6.0 |
1.0 |
2.0 |
チェーンドラッグ |
62.0 |
28.0 |
8.0 |
1.0 |
1.0 |
メイルオーダー・ウエブサイト |
58.0 |
32.0 |
9.0 |
0.5 |
0.5 |
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薬剤師の信頼度はどの業態でも高く、「とても信頼する」と「信頼する」の合計では90%内外と高い。その中でも独立ドラッグが一番高い。この信頼を裏切らないようにするために、処方箋や薬歴の電子化を促進しており、調剤過誤の防止に非常に役立っている。なにしろ米国では毎年1.5百万人の人が何らかの調剤過誤により損害を受け、数千人が死亡している。そして、この調剤過誤で国に年間35億ドルの損害を与えている。
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◆調剤サービスの重要性
サービスの種類 |
非常に重要 |
重要 |
あまり重要でない |
重要でない |
価格及び保険関連 |
68% |
28% |
1% |
3% |
専門的サービス |
60 |
35 |
3 |
2 |
便利性 |
56 |
36 |
5 |
3 |
店舗サービス |
37 |
39 |
13 |
11 |
予防・ウエルネスサービス |
13 |
22 |
31 |
34 |
メールオーダー・ウエブサイト |
9 |
15 |
23 |
53 |
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調剤サービスの重要性では「価格及び保険関連」という項目が最重要で、これは自分の保険にどの薬が適用されるかを知ることや保険会社への手続きなどについてのサービスであるが、80%以上の人々が保険を持っている現状では当然のことだ。2番目に「専門的サービス」、そして3番目に「便利性」が問われる。
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◆最も利用されるファーマシー
タイプ |
2006 |
2005 |
2004 |
2003 |
チェーンドラッグ |
34% |
42% |
42% |
43% |
メール・ウエブサイト |
20 |
18 |
20 |
17 |
独立店 |
15 |
8 |
9 |
11 |
スーパー |
12 |
13 |
13 |
14 |
マスマーチャンダイザー |
11 |
9 |
7 |
6 |
クリニック |
7 |
9 |
10 |
10 |
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最も利用されるファーマシーをタイプ別に見ると、チェーンドラッグだけが急落している。効率を追いすぎる姿勢に顧客が魅力を感じなくなった結果だ。嬉しいことに、独立店は顧客との親身な関係作りが大きな武器になって、前年の倍近くも伸びている。そして独立店利用者の90%は今後も利用し続けると述べている。マスマーチャンダイザーは調剤室を入り口近辺に配置することによって便利性を高めた。これが利用者に評判が良くてシェアを高めた。
業態別に顧客の期待するものが違っているのが面白い。チェーンドラッグの患者は「便利性」を最も期待しているが、独立ドラッグの患者は「専門的なサービス」と「薬剤師との親身な関係」を、ウォルマートなどマスマーチャンダイザーの患者は「価格」を、クリニックの患者は「予防・ウエルネスサービス」を、又メールオーダー及びウエブサイトの患者は「ウエブサイトサービス」を最も期待している。
満足度では独立ドラッグが一番高く評価されているが、それは患者との密接な関係作りに起因するところが大きい。実際に独立ドラッグの患者の41%は薬剤師と密接な信頼関係が築かれていると答えているが、スーパーマーケットファーマシーでは16%、マスマーチャンダイザーやチェーンドラッグでは僅か12%の患者しか、薬剤師と密接な関係が築かれていると答えていない。独立ドラッグが再度活躍しだしたのは、患者と薬剤師の間に信頼できる人間関係があるからだ。事実、独立ドラッグの多くの患者は薬剤師と自由に話すことが出来て、親切なカウンセリングをしてくれると答えている。
患者の正しい薬の摂取には多くの改善余地がある。まず患者の2/3弱しか必要な薬をきちんと処方してもらっていない。また服薬をやめたり、必要量より少なく服薬している。必要な全ての薬を処方してもらわない理由として最も多いのが、「必要ない(42%)」と自己判断していること、次いで「高い(27%)」である。処方してもらった薬を正しく服薬しない理由の第一は「忘れた(79%)」、次に「薬が切れた(19%)」である。調剤薬の服薬による消費者の経済的負担は年々高くなっており、2005年度の調剤平均単価は46.25ドルで前年比+4ドル(9%アップ)していることも影響している。今後患者がきちんと必要な薬を服薬するように、薬剤師が患者に対して必要性をしっかり説明したり、リフィルの時期が来たら患者に知らせるというシステムも必要になってきている。ウォルグリーンなどの大手ドラッグでは、患者の了承があればリフィルの時期を知らせるシステムを既に導入している。
このところインストアクリニックという考え方が急速に進んできている。ヘルスケアのワンストップショッピングということで、米国のファーマシーにとっては究極の目的来店性の武器になる。また、クリニックで処方された処方箋の90%は店内のファーマシーに来て受け取られるのでビジネス上も良い。またインストアクリニックに来る客の70%は、今までその店舗を利用したことの無い新規客なので、新規客の獲得にも非常に役立つ。しかもその新規客は、クリニックに来たついでに、38%の客がOTCを、80%の患者が雑貨を購入している。CVSはインストアクリニックの高い可能性に注目し、インストアクリニックを成功させた最大の大手ミニット・クリニックを買収した。現在インストアファーマシーは165箇所あるが、将来2000箇所まで成長すると予測されている。保険会社も、コスト面で通常のドクターに行くより安く上がるので積極的であり、現在ではインストアファーマシーの40%は大手の保険を適用している。各インストアクリニックには上級看護師、医師アシスタントがいるが、実際に医師を配置している所もある。料金的には35ドル〜130ドルの幅だ。現金客は20%程度で、他は保険適用客だ。このインストアクリニックの成功要因で最も重要なのは、「便利な立地」ということである。また顧客は保険を持っていない人々で、保険会社が介在しないため利益の上がる大切な顧客だ。この人々はヘルスケアに毎年320億ドル使っている。また子供を抱える若いファミリーも大切なターゲット客だ。予約が不要で待ち時間が少ないというのは、忙しい彼らにはとても魅力的だ。問題は重度の病気を見逃される危険性があること、治療履歴が普段利用している医師の記録に残らないこと、そして医師からの反発だ。これらが今後の課題となっている。
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◆代表的なインストアクリニック
クリニック名 |
出店店舗 |
店舗数 |
2007年までの
予定店舗数 |
MinuteClinic |
CVS、Bartell Drug |
83 |
600 |
Take Care |
Brooks/Eckerd,
Rite Aid、Walgreen |
17 |
400 |
RediClinic |
DuaneReade,
Walgreen、Walmart |
11 |
100 |
SmartCare Family
Medical Centers |
Kerr Drug、Kroger、
Walmart |
3 |
400 |
The Little Clinic |
Kroger |
11 |
50 |
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